144 民話 カハラオプナ(26.カウヒらはイムで焼かれる)

(前回からの続き)

カウヒらがイムで焼かれる

裁判が行われている間に、若者の従者たちはイム(地下オーブン)の準備を始めていました【解説1】(*1)。
若者かカウヒのいずれかが死刑判決を受ける、と予想されたからです。


3人の死刑が決まった時、既に2つの大きなイムが加熱されていました。

そして、カウヒと醜い2人(トラブル・メーカー)が、そのイムの中で焼かれたのでした。
さらに、彼らと死を共にしたいと願う、家臣や召使いたちが彼らに続きました。

カウヒを見捨てカハラオプナに仕える

カウヒに仕えていた人の中でも、彼の行為にはかなり多くの人々が激怒しました。
あの若く愛らしいカハラオプナに対して、余りにも彼が残酷だったからです。

彼らは、自分たちの首長のために彼女が被(こおむ)った苦しみを、放っておけませんでした。
そこで彼女への償(つぐな)いとして、自分たちが彼女に仕えたい、と申し出たのでした。

こうして、彼らはこの出来事を機に、カウヒを見捨てて彼女に仕えるようになりました。

カハラオプナは若者の花嫁に

そして王様は、カハラオプナがその若者の花嫁になることを許しました。

なぜならば、彼は彼女を死から救い出したばかりでなく、
彼女が受けた理不尽な残虐行為に仕返ししようと、手を尽(つ)くしてきたのですから。

(次回に続く)
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【解説1】イム(地下オーブン)
イム( imu)とは地下オーブン(ground oven)のことです。
地面に穴を掘って、その底に加熱した石を敷いて作ります。

このお話の中では、イムは罪人を焼き殺すために使われます。
穴の寸法が大きく焼石も数多く必要なので、穴を掘ったり石を焼いたりする準備に時間を要します。

なお、かつてのハワイでは、生贄として神に捧げる人間を、イムで焼いたと伝えられています。


また、イムは大量の食物を素早くかつ効率良く料理するのに、最も容易な方法でした。
しかし多くの人手を要するために、この料理法が使われるのは、特別なイベントや儀式の時に限られました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.