145 民話 カハラオプナ(27.サメの長老が連れ去る)

(前回からの続き)

長老ザメがカウヒらを連れ去る

カウヒと彼の仲間たちが焼かれたイム(地下式オーブン)は、アプアケハウ川の岸辺にありました(N.1)(*1)。


そして、そこは有名なウルコウ果樹園の中で、海のすぐ近くでした(N.2)。

次の夜、その河口近くの川岸を、とてつもなく大きな波が襲いました。
--巨大なパワーを誇るカウヒの家族神、長老ザメが送らせた波です(N.3)。

その波は一瞬のうちに、2つの地下オーブンを洗い流してしまったのです。
そして翌朝行ってみると、そこにはもう何もなくなっていました。

カウヒらの骨は、長老ザメにより海中深くへ持ち去られてしまったのです。

山峰とサメに姿を変える

醜い2人、クマウナとケアワアにも彼らの家族神がいます。
その家族神のパワーのお陰で、彼らはマノア渓谷の東奥にある2つの山峰に姿を変えました。

そして、カウヒと彼の従者たちはと言うと、ワイキキの海中深くに住むサメに姿えたのでした。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) アプアケハウ(Apuakehau)川:
運河が出来る前のワイキキには、3つの川が流れていました。
その中で一番大きい川がアプアケハウでした。
その河口は、モアナ(Moana)・ホテルの近くにありました(*2)。
このホテルはワイキキで1番古く、1901年の開業です。


すぐ近くには、古くから王族たちが住んだ、ヘルモア(Helumoa)がありました。
こちらには現在、ワイキキで2番目に古いホテル、ロイヤル・ハワイアンなどがあります。

(N.2) ウルコウ(Ulukou)果樹園:
ウルコウはワイキキ内の地名で、現在、モアナ・ホテルがある場所を指します(*2)。
一方、"ulu"=果樹園、"kou"=樹木名なので、この場所はかつて「コウの果樹園」だったと思われます。
コウはハワイの在来種で、生活用品の原材料として貴重でした。


その木で作った容器は、食物を入れても味が変わらないため、色々な容器や台所用品に使われました。
また、花はレイ(花輪)に使われ、葉はカパ布を染める染料などに使われたそうです。

(N.3) 家族神のサメ:
ここで登場したのは、サメの姿でこの世に現われる家族神(守護神)で、ハワイ語で言うアウマクア(ʻAumakua)の一つです。
このお話でこれまでに登場した家族神は、フクロウ、エレパイオなどの鳥たちでした。
これに対してサメは、漁をする人々の間では最も一般的な家族神です。
このサメをハワイ語で言うとマノ(manō)です。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales,Ⅺ. Kahalaopuna, Princess of Manoa. Mrs. E.M. Nakuina.
(*2) Pukui et ai.(1974): Place names of Hawaii, Reviced and Expanded Edition, University of Hawaii Press.