151 民話 カアラとカアイアリイ(3.カネアプアの岩とカウノル村)

(前回からの続き)

カネアプアの岩

海辺には一つの巨大な岩がそびえ立ち、あたかも塔のように見えます(*1)。
陸から海の中にまで延びた断崖の先端部分が、自然界の激しい変化の中でもぎ取られたのでしょう。


カネアプアの岩と呼ばれるこの岩は、大海原の一部を仕切って、荒々しい様相の湾を形成しています。

岩の高い壁面の頂部は、外側に張り出しています。
そのため誰一人として、またたとえ山羊(ヤギ)でも、この壁面を登ることは出来ません(*2)。

ところがこの岩の頂部は、狭いながらも平坦になっています。
そして、かつて人が活動した跡、祭壇や壁などの跡が残っているのです。

そうです。
ここはかつて、断崖上にあるヘイアウ(神社)の一部だったに違いないのです。

しかし今では誰一人として、この岩の上まで行くことは出来ません。
張り出した岩の壁面を登ることなど、出来るはずも無いのです。

漁場の魅力が人々を呼ぶ

ヘイアウの内陸側には、かつて人々が住んだ小屋の跡が見られます。


海辺から丘の斜面に至る広大な地域に、色々な遺構が数多く残されています(*3)。
主なものだけでも、石で出来た基礎、豚を飼うための囲い、円形の地下式オーブンなどがあります。


カウノル遺跡と呼ばれるこの地には、かつてかなり多くの人々がいたようです。

その頃のカウノル村は、「神の住み家」として、また「駆け込み寺」の村として有名でした。

しかし、人々がこの村に集まって来た一番の理由は、有名な漁場がここにあったからです。
そしてこの村は、海にかかわる様々(さまざま)な生活をする人たちで、ごった返していました。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.
(*2) 山羊は一般的に山岳地帯の岩場等を好み、人間が登れないような断崖でも、容易に登ることが出来ます。


(*3) Boyd Dixon et al.(1955): Community Growth and Heiau Construction: Possible Evidence of Political Hegemony at the Site of Kaunolu, Lanai, Hawaii, Asian Perspectives, Vol.34,No.2.