153 民話 カアラとカアイアリイ(5.山のような贈り物)

(前回からの続き)

島の産物を献上する

この偉大な戦士・カメハメハがカウノルに来ると、島の住人たちはどっと岸辺に押し寄せて、大王に忠誠を誓いました(*1)。

そして、いつものように、彼らの偉大なる統治者の足元に、島で採れた数々の産物を並べました。
  タロ、ヤム、ハラ、ココナッツ、オーヘロ、バナナ、そしてサツマイモ(N.1)。


人々は大王の倉庫のとびらの前に、山のように食物を積み上げました。
さらに、ポイを食べて太った犬や、2m近くもある大きな豚が、群れをなして騒ぎ立てています。

花と香りで歓迎する

島で働く男たちからの献上物とは別に、女たちは香り高い花を贈りました。
そしてあたり一面に花を飾り付け、甘い香りで溢(あふ)れさせたのです。

うら若い女性たちは、ナーウーの花で作ったレイや花輪を、頭からウエストまで巻き付けていました(N.2)。
このナーウーはとても珍しいクチナシ属の花で、言わばラナイ島が誇る愛らしきジャスミンです。


その甘い香りはそよ風に乗って、はるか彼方まで届けられます。
ですから、その香りをたどれば、遠く離れた所にあるナーウーの灌木も、見つけることが出来ます。

出来上がった多くの花輪は、大王の倉庫の壁に並んで留めてありました。
やがて、戦士たちに取り囲まれて大王とその一族が姿を現します。

すると大王を守る若い戦士たちの首に、次々と花輪がかけられました。
また王族たちの額には、高貴なマイレの葉で作ったレイが巻かれて、香り高き王冠になりました。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) タロ(taro), ヤム(yamu), ハラ(hala), オーヘロ(ohelo) :
タロは主食ポイの材料となる芋で、ハワイで最も重要な農作物でした。
ヤムはポイには適しませんが保存がきく芋で、鮮やかな紫色をしています。
ハラの葉は、マット、籠(かご)、帽子などの材料として優れていました。
オーヘロの赤い実は、可愛いだけでなく食用にもなります。


(N.2) ナーウー(na-u) :
ナーウーは、ハワイにしか生育しないハワイの固有種ですが、現在、絶滅が危惧されています。
その白い花は強く甘い香りがして、レイに使われます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.