154 民話 カアラとカアイアリイ(6.カアラの甘い香り)

(前回からの続き)

ひときわ輝くカアラ

恐れ多き大王の前に、大勢の若い女性たちが集まっていました(*1)。
そのなかで、ひときわ輝いていたのがカアラ、「甘い香りの女(Sweet Scented)」でした。

彼女の甘いブラウンの顔は、ちょうど今、15の太陽の光を受けて、柔らかい黄金色に輝き始めました。
まん丸で大きく優しい彼女の目には、しおれ消え失せてゆく炎など、未だ見えるはずもありませんでした。

彼女は木の葉を重ねて腰に巻いたスカート、パーウーを着けていました(N.1)。

しかし、若い体のそれ以外の部分、首や両腕などの肌からは、淡い光が放たれていました。
その輝きは、あたかも夜空に昇りはじめた月のようでした。

フラグランス(芳香)の女

若い真っ盛りにあり、彼女の肌は輝いていました。

その彼女のほのかで健康的な匂いは、咲き誇る花の香りと溶け合って、一つになったのでした。
彼女が生み出すその甘い香りは、人々から「芳香(Fragrance)」と呼ばれるようになりました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) パーウー(pa-u) :
パーウーは、女性が腰に巻くサロン(腰巻)やスカートです。


その素材の中で、最も一般的だったのは カパ(kapa)と呼ばれる、樹皮から作った布です。
本文では "leafy pa-u"と記されているので、木の葉が素材です。
木の葉の中で最もポピュラーなのは ティー・リーフ(t-leaf)で、フラのスカートにも使われています。


(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.