155 民話 カアラとカアイアリイ(7.この島はエデンの園)

(前回からの続き)

島の暮らしは健康的

この島国に文明の波が押し寄せる前、人々の生活は健康的で清潔でした(*1)。
彼らは日々、水浴びをしては、穏やかなそよ風を楽しんでいました。

彼らの手足はしなやかで、その動きはきびきびしていました。
健全な生活の中で、彼らは太陽の光を受けて輝き、益々たくましくなりました。

輝く皮膚には花輪がお似合い

彼らは、さほど衣服に気を使いませんでした。
丈が長くて汗をかくようなガウンなど、身に着けようともしません。

彼らには、滑らかで輝く皮膚があるのです。
太陽の光を跳ね返してピカピカに輝く皮膚が、あの豊かで物悲しげな魅力をもたらすのです。

このような民族は、恐らく衣服を身に着けたままでは、そう長く生活出来ないでしょう。
彼らに良く似合うのは海の水しぶき、そして、花や葉で作った花輪なのです。

あたかもエデンの園

そよ風が吹くと、肌の茶色と木々の緑が、優しく溶け合います。

薄い琥珀(こはく)色をした、うら若い女性たちの柔らい頬(ほお)は、やがて真っ赤に紅潮します。
すると、島々の香りがする緑色の葉の輪(レイ)が、彼女たちにかけられるのです。


この光景を見ると、あたかも欧米の詩歌の世界にいるように感じるでしょう。
そして、甘く自然のままの優雅さが漂う、エデンの園を思い出すことでしょう。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.