160 民話 カアラとカアイアリイ(12.マイロウが倒れる)

(前回からの続き)

チャンスを狙う

そして今や2人は、互いに相手を引き寄せつつ両腕を高くかざし、
力をこめて両手を広げました(*1)。

それはちょうど、厳(いか)めしいカニのハサミが、
獲物をしっかりと掴(つか)んで、離すまいとしているようです。

彼らは、相手に致命的なダメージを与えて、この戦いに決着をつけるチャンスを狙っているのです。

攻めるマイロウをカアイアリイが捕える

初めに攻撃を仕掛けたのは、傷跡がある幼女絞殺魔・マイロウです(N.1)。

いきなり、若き槍の男・カアイアリイに襲いかかると、
相手の喉(のど)を絞めようと、右腕をグイッと伸ばしました。

しかし、カアイアリイはその腕を素早く殴打(おうだ)し、
自分の腕の中に抱(かか)え込んでしまいました。

カアイアリイが相手の両腕を折る

それから、相手の肩をめがけて、大槌(おおつち)のような一撃を素早く放ち、
肩関節の骨をへし折ってしまったのでした。

骨を折られたボーン・ブレイカー(マイロウ)は、途方に暮れつつも怒りにかられ、
残された片手を握りしめて、その拳(こぶし)で反撃しようとしました。


しかし、激しい格闘が続くなかで、カアイアリイがそれを許すはずもありません。
彼の若くてたくましい腕の筋肉は、怒りに震え張り詰めていたのです。

カアイアリイが、マイロウの残る片腕をねじ折ったのは、それから直ぐでした。

逃げるのも許さぬ

両腕をへし折られ、打ちのめされた残酷者・マイロウは、今度は逃げようとしました(N.1)。

しかし敏速なカアイアリイは、憎しみを込めてマイロウに襲いかかりました。
そして彼の喉(のど)を、両手でグイッとつかんだのです。
  
マイロウを押し倒しながら、カアラの英雄・カアイアリイは、
不運な悪党・マイロウの背中を、膝(ひざ)で押え込みました(N.1)。

背骨をへし折る

カアイアリイが狙ったのは、相手の背中を支える背骨でした。
彼はその背骨を強く引いてはぐいと押し返して、力まかせに曲げ始めたのです。

そしてカアイアリイが相手の体から離れたのは、その背骨が幾度となく音を立てて折れた後でした。

こうして遂に、少女や乙女(おとめ)の絞殺魔(こうさつま)・マイロウは、
マットの上でうつ伏せのまま、動かなくなりました(N.1)。

そこにあるのは、骨を折られて血みどろの、一つの死体でした。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) マイロウ(Mailou)には数多くの呼称がある:
マイロウが初登場したのは本ブログの「157」で、そこでは 「ボーン・ブレイカー(bone-breaker)」と呼ばれました。 その後、「158」では 「処女を食い物にする--男(virgin-eater)」と呼ばれました。

ここ「160」でのマイロウは、これまでとは違う色々な呼称で呼ばれるので、以下にまとめておきます。
「傷跡がある幼女絞殺魔(scarred child-strangler)、残酷者(bruite)、不運な悪党(hapless wretch)、少女や乙女の絞殺魔(dread throttler of girls and babes)。」

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.