161 民話 カアラとカアイアリイ(13.勝利の宴)

(前回からの続き)

大王がカアイアリイの勝利を告げる

「よーし!」 と 大王が叫びました(*1)。

「この若者カアイアリイは、カネコアのように強いぞ(N.1) 。
さあ、彼を愛するあの娘カアラに、若者の手足を癒(いや)させよう!

肌を叩(たた)いたり、関節を押さえたり、背中をもんだりさせるのだ。
--愛情をこめて体をつかみ、ロミロミ・マッサージのタッチで(N.2)。

もうじき素晴らしい料理が出来るし、フラ・ダンスや歌も始まる。
そして、宴会が終わったら、彼らを2人だけにしてやろう。」

女性たちが歌いヒョウタンを操る

女性たちが並んで座っています。

彼女らは夢中になって、同じ歌を繰り返しています。
戦いに勝利して愛を勝ち取った、カアイアリイを褒(ほ)め讃(たた)えているのです。

彼女らは右手にフラのヒョウタン楽器を持っています(N.3)。

ヒョウタンの中に入っている小石が、カタカタと音を立てています。
彼女らがヒョウタンを、空高く放り投げるからです。

そしてまたある時は、振り回したり揺らせたりします。
さらに手のひらで叩(たた)いたり、マットにドンと叩きつけたりします。

さあフラ・ダンスが始まる

さあ、いよいよフラ・ダンスの始まりです。

彼女たちは柔軟な関節で腰を振り回したり、上下に振ったり、また、ねじったりします。
さらには、体を優雅に揺らせたり、また歌ったりもするのです。

このようにして、ワイルドなダンスがいつまでも続きます。


若い女性たちが立ち上がる

カアラは、何人かの若い女性たちと一緒に立ち上がりました。
この女性たちは、優しくて大切に守られている、王たちの贈り物なのです。

彼女らは花輪を巻き付けた体を揺らせて、日の光に輝く腕でポーズを取ります。
そして木の葉のスカートを手で揺らせながら、円熟した足をのぞかせています。

カアラはカアイアリイのもの

その彼女らの動きが、見守っていた男たちを燃え立たせました。

今日の英雄・カアイアリイは、炎のように情熱的な目でカアラを捕えると、
愛する彼女のもとへ飛ぶように走り、しっかりと彼女を抱きしめました。

そして彼女を連れ去りながら、こう叫んだのでした。
「これから君は、ハワイ島コハラにある僕の家で、永遠に僕だけのために踊るのだ!」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) カネコア(Kanekoa):
カネコアはカメハメハ大王(Ⅰ世)の叔父で、大王の父親ケオウア(Keoua)とは異母兄弟です(*2)。

(N.2) ロミロミ(Lomilomi):
ロミロミとはハワイの伝統的なマッサージのことで、ハワイアン・マッサージなどとも呼ばれます。

(N.3) フラのヒョウタン楽器(hula gourd):
ヒョウタンで作られた代表的な楽器を、ハワイではイプへケ(Ipu heke)と呼びます。
"Ipu"が「ヒョウタン(・ドラム)」、 "heke"は「頂部ヒョウタン」と言う意味ですから、
イプへケとは 「頂部ヒョウタンが付いたヒョウタン・ドラム」のことです。


イプへケのなかでも、下のヒョウタンが大きものは床に置いて演奏し、2つとも小さいものは手に持って踊りながら演奏できます。
本文では、放り投げたり振り回したりするので、後者のタイプを使っているようです。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.
(*2) Kapiikauinamoku (Sammy Amalu) (1955): The Story of Hawaiian Royalty, Honolulu Advertiser, Sept.11 - Dec.20, 1955.