165 民話 カアラとカアイアリイ(17.行きも帰りも空を飛べ)

(前回からの続き)

あなたは私の生きる力


あの可愛らしいジャスミンの女、カアラはカアイアリイの首に両腕を巻き付けました(*1)。
それから彼の胸に頬(ほほ)をあてると、優しいまなざしで彼を見上げて言いました。

「おお、私の首長よ。あなたは、私に生きる力と素晴らしい喜びを下さった。

あなたの息づかいは私の活力、
あなたの目は私をこの上なく幸せにし、
あなたの胸は私の唯一の安らぎの場です。

私が出かける時は、幾度となくあなたを振り返るでしょう。
そして後ろ髪を引かれる思いで、ゆっくりと歩くことでしょう。

しかし、あなたのもとに戻る時は、翼を手に入れましょう。
そう、ご主人のもとに私を運んでくれる翼を。」

行きも帰りも空を飛べ

「そうだ、私の大切な小鳥よ、」 とカアイアリイが言いました。

「あなたは大空を飛ぶんだ。
それも帰る時だけじゃない、行く時も素早く飛ぶんだ。
私をめざして、行きも帰りもずーっと飛ぶんだ。


あなたが行ってしまった後、私は柔らかい稚魚・オフアを槍で突き、ヤムやバナナを焼こう(N.1)。
それから、おいしい水をヒョウタン容器に満たすだろう。

そして、愛するあなたが戻った時に、食べさせてあげよう。
だからその時は、あなたの愛をこめた眼差しが欲しいんだ。」

彼女を連れ戻さぬと殺すぞ

「さあ、オプヌイよ! あなたの子・カアラを連れて行きなさい。

あなたは彼女に命を与えた。
しかし今は、彼女が私に生きる力を与えているのです。

太陽が2度昇ってしまう前に、彼女を元気に連れ戻して下さい。

もし彼女が戻らなければ、私はすぐに死んでしまうでしょう。
しかしその前に、あなたを殺すことになるでしょう。

ですから、おー、オプヌイよ! 急いで行って、急いで戻って来て下さい。
そして、私の命であり愛である彼女を、私のもとに連れ戻して下さい。」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ヤム(yam):
ヤムとは、かつてハワイで食用に栽培された、ヤマノイモ属のイモの総称です。
その中の代表的な種がウヒ(uhi)だったので、通常、ヤムと言えばウヒのことでした(*2)。
ヤムを食べる時は、イムと呼ばれる地中オーブンで焼きました。
但し、ハワイの伝統的な主食である、ポイ(poi)の材料としてはヤムは不適でした。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.
(*2) R.D.K.Mitchell(1992): Resource Units in HAWAIIAN CULTURE, Rev.Edition, Kamehameha School.