166 民話 カアラとカアイアリイ(18.愛し合う2人の別れ)

(前回からの続き)

愛するカアラとの別れ

英雄カアイアリイが意を決して、固く握っていた少女カアラの手を放すと、彼女は涙を流して泣きました(*1)。

その彼女を前にして、彼の目は冷静で穏やかでした。 しかし、
閉ざされた唇には、彼女を愛する強く優しい心が表れていました。

そして彼の体には、うずくような痛みが走りました。
それは、彼女とのこの短い別れよりも、もっと大きな悲哀の痛みでした。

彼は彼女の小さな顔に、両手を優しくあてました。
そして涙にむせぶ彼女の唇に、幾度も繰り返しキスをしました。

それから、心をこめて彼女の手を強く握りしめると、
たくましく大股で足早に立ち去ったのでした。

断崖上でカアラを見送る

カアラが、石ころだらけの上り坂の小道を、歩いていた時のことです。
彼女は愛する彼を一目見ようと、ちらっと後ろを振り向きました。

すると、彼女の愛する首長カアイアリイが、岩の上に立っているではありませんか!
-- あの海にせり出した、巨大な断崖絶壁の一番高い岩の上に。

それから、もう少し歩いてまた振り返ると、 彼はまだそこに立っていました。

そして、彼女が尾根にたどり着き、隣の深い渓谷に下りようと言う時、
彼女は最後にもう一度、後ろを振り返りました。

すると彼女の愛する首長は、前と同じように、じっと彼女を見上げていたのでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.