168 民話 カアラとカアイアリイ(20.本当のことを聞くんだ!)

(前回からの続き)

岩だらけの海

疲れ果てた哀れな少女カアラは、父の言うことが信じられないまま、重い足取りで歩きます(*1)。
そして、もの恐ろしい父の不機嫌な目を、悲しげにちらっと見るのでした。

彼女はいら立ちながらも黙って、石ころだらけの小道を海岸に向けて進みました。
ところがいざ海辺に着いてみると、目に見えるのは岩ばかり、岩場の海岸でした。

カアラが口を開く

胸が張り裂けるような思いで、彼女が声を上げました。

「ああ、お父様。 サメが私の母にでもなると言うのですか?
そして、私はもう二度と愛する首長に会えないのですか?」

本当のことを聞くんだ!

「いいか、本当のことを聞くんだ!」と、父オプヌイが叫びました。

「確かにしばらくの間、お前の家は海の中だ。
しかし、サメはお前の友達になるので、襲って来ることなど無い。

お前は、海の神が住んでいる所に下りて行くのだ。
すると神はきっと、こう言うだろう。

『ラナイの人々に血なま臭い飛び込みをさせた、あの呪われた首長は(N.1)、
たとえどの娘でも、このラナイ島から連れ去ることは出来ない。』

もしも、お前の首長カアイアリイが、コハラに向けて舟を漕ぎ出せば、
直ぐにオロワルの首長が現われて、お前を再びこの地に連れ戻すだろう(N.2)。」


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 「血なま臭い飛び込み(bloody leap)」:
「マウナレイ(Maunalei)の決戦において、首長(カアイアリイ)がラナイの人々を断崖上に追い詰め、次々と深い谷に飛び込ませたことを指します。
詳細は、「156 民話 カアラとカアイアリイ(8.二人の出会い)」を参照下さい。

(N.2) オロワル(Olowalu):
オロワルはすぐ東隣のマウイ島にあり、かつ海を挟んでラナイ島に面しています。
マウイ島の王ケカウリケ(Kekaulike)の娘、カロラ(Kalola)が統治していた頃は、大きな町として栄えていました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.