(前回からの続き)
そこには動物の死骸を食べ、スカベンジャーと呼ばれるカニたちがいます。
彼らは石の上を素早く這い回って、姿を消してしまいました。
そして今度はウツボ。
あの忌まわしく今にも咬みつきそうな魚です。
あごを大きく広げて、口の中の鋭い歯を見せています。
ゆっくりと頭を伸ばしながら、今にも彼女の柔らかな足に咬みつき、引きちぎってしまいそうです。
その彼が頭を持ち上げている穴こそが、恐ろしい隠れ家。
恐れ多い海の神の住み家なのです。
そして、カナカである父の膝にしがみつきながら、こう叫びました(N.1)。
「ああ、お父様。
どうか私の脳を、このギザギザした石で叩(たた)きつぶして下さい。
あのウツボが怖いんです。
私の首に巻き付かないよう、私を守って下さい。
ほら、ぬるぬるして薄気味悪いウツボが、忍び寄って来るわ。
私が死ぬまでは、絶対に私の体を這(は)い回らせないで。
ああ、今度はカニだわ!
私が息絶える前に私を引き裂き、肉をもぎ取ってしまうわ。」
と、父オプヌイが言いました。
「私と一緒に、暖かくて日の当たる所に戻してあげよう。
もう一度、あの甘い香りの花が咲き誇る、パラワイ谷を歩くんだ。
香り高いジャスミンで花輪を作って、自分の首にかけるんだ。
それには、私と一緒にオロワルの首長の家に行かないとだめだ。
そこで、お前の血生臭いご主人(カアイアリイ)に見せつけるんだ。
--お前がオロワルの首長に抱かれて愛を交わすところを。
(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) カナカ(kanaka):
有史以前、ポリネシア人が太平洋を渡って、ハワイに住み着きました。彼らはハワイの先住民族で、カナカ(または、カナカ・マオリなど)と呼ばれています。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.
恐ろしい動物たち
洞窟内の湿っぽい石からは、しずくが垂れています。そこには動物の死骸を食べ、スカベンジャーと呼ばれるカニたちがいます。
彼らは石の上を素早く這い回って、姿を消してしまいました。
あの忌まわしく今にも咬みつきそうな魚です。
あごを大きく広げて、口の中の鋭い歯を見せています。
ゆっくりと頭を伸ばしながら、今にも彼女の柔らかな足に咬みつき、引きちぎってしまいそうです。
その彼が頭を持ち上げている穴こそが、恐ろしい隠れ家。
恐れ多い海の神の住み家なのです。
カアラがへたり込む
かわいそうに少女カアラは、この薄暗い岸辺にへたり込んでしまいました。そして、カナカである父の膝にしがみつきながら、こう叫びました(N.1)。
「ああ、お父様。
どうか私の脳を、このギザギザした石で叩(たた)きつぶして下さい。
あのウツボが怖いんです。
私の首に巻き付かないよう、私を守って下さい。
ほら、ぬるぬるして薄気味悪いウツボが、忍び寄って来るわ。
私が死ぬまでは、絶対に私の体を這(は)い回らせないで。
ああ、今度はカニだわ!
私が息絶える前に私を引き裂き、肉をもぎ取ってしまうわ。」
救いの道はある
「良く聞くんだ。」と、父オプヌイが言いました。
「私と一緒に、暖かくて日の当たる所に戻してあげよう。
もう一度、あの甘い香りの花が咲き誇る、パラワイ谷を歩くんだ。
香り高いジャスミンで花輪を作って、自分の首にかけるんだ。
それには、私と一緒にオロワルの首長の家に行かないとだめだ。
そこで、お前の血生臭いご主人(カアイアリイ)に見せつけるんだ。
--お前がオロワルの首長に抱かれて愛を交わすところを。
(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) カナカ(kanaka):
有史以前、ポリネシア人が太平洋を渡って、ハワイに住み着きました。彼らはハワイの先住民族で、カナカ(または、カナカ・マオリなど)と呼ばれています。
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.