176 民話 カアラとカアイアリイ(28.カアラを捜す旅に出る)

(前回からの続き)

ウアに癒(いや)され蘇(よみがえ)る

途方に暮れた首長(カアイアリイ)は、立ち上がる砂ぼこりの中で、うつ伏せに倒れ込みます(*1)。
そして、神々と聖なるタブーに悪態をつきます。

やがて彼は友人たちの手で、自分の小屋に連れて行かれます。
そしてウアの柔らかい手が、彼の手足をこすったり揉(も)んだりして、筋肉の痛みを癒します。

さらに彼女はポイを容器に入れて用意し、味わいある干しイカを添えます(N.1)。
彼はこのご馳走を食べ腹一杯になると、再び全身に闘志がみなぎるのでした。

カアイアリイの決意は固い

もはや彼は、首長や友人たちが、どれだけ忠告したり懇願しても、聞き入れようとしません。
さらに彼を愛するようになったウアの、愛の誘惑さえも退(しりぞ)けます。

そして彼は、唯々こう言うのです。

「何があろうと、私はカアラを捜しに行く。
そして、もしも見つからなけれな、私は死ぬ。」

カアラを捜す旅に出る

こうして恋に悩む首長は、愛するカアラを捜して島の内陸地方に行きます。

彼はクモクの林、そしてマハナの森の隅々まで捜し歩きます。
そして消えてしまった愛する人の名を、大声で叫ぶのです。

それから、雲に覆われたパラワイ盆地を、あてもなく歩いて通り抜けます。
そして、木が生い茂るカルルの渓谷の中を捜します。

マウナレイの大渓谷ではカアラの名前を大声で叫び、「カアラ、カアラ!」と こだまさせます。


彼はマウナレイの高い壁に挟まれた、深い渓谷の底を進んで行きます。
足元には地面を覆うように花が咲き誇り、小川が曲がりくねって流れています。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 容器(calabash):
"calabash"(ハワイ語では "ʻumeke")は、ハワイ人の主食ポイ(poi)を入れる容器として、しばしば登場します。
英語の"calabash"は「ヒョウタン」を意味しますが、ハワイの容器は、コウ(kou)などの硬い木で作るのが普通です。


(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.