177 民話 カアラとカアイアリイ(29.断崖上で怒りをぶちまける)

(前回からの続き)

渓谷の一番奥で喉(のど)をうるおす



小川に沿って歩き続けたカアイアリイは、やがてその水源にたどり着きます(*1)。
そこは渓谷の一番奥で、目の前には高さ30mもの、険しい岩がそそり立っています。

この高くて急勾配の岩肌からは、岩のフィルターを通り抜けた、心地良く澄んだ水がにじみ出ています。
それが滴(したた)り無数の細流となり、シダやコケにぶつかると飛び跳ね落下して行きます。

その水が断崖の下に集まって、氷のように冷たい池が出来ています。
疲れ果てた首長カアイアリイは、喜んで渇(かわ)いた喉をうるおしました。

切り立つ断崖をよじ登る



そして我が英雄カアイアリイは、この渓谷の急な断崖をよじ登り始めます。
当時、人間の足ではとても登り切れない、険しい岩の壁です。

しかし彼は岩の割れ目を見つけ、つま先を突っ込みながら登っていきます。
時には、わずかに張り出した岩や、尖った岩の先で一休みします。

そして、自分の体を引き上げる時は、頭上の灌木やシダの強そうな房を、しっかりと掴(つか)むのです。

断崖上で怒りをぶちまける

長槍の名手カアイアリイは、恐れを知りません。
頑強な筋肉と大胆不敵な神経を駆使して、彼は険しい岩場を登り切ります。

思い起こせば、彼にとって今日は激しい怒りの日でした。

断崖上に立った彼は、パニックに陥った敵オプヌイに、思いっきり悪口を浴びせました。
そして彼を思いやることもなく、唯々、彼を悪者に仕立てたのでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.