178 民話 カアラとカアイアリイ(30.海の洞窟があやしい)

(前回からの続き)

聖なる水源ワイアケクア



カアイアリイは、パオマイの地をどんどん進んで行きます(N.1)(*1)。

それからカイホレナ渓谷の中にある、草木が茂った小さな谷を通り抜けます。
さらに、カウノルとカルルを横切って進みます(N.1)。

そして遂に、ワイアケクアと呼ばれる、聖なるケアリアの水源に着きます(N.1)。
彼はここで、バナナとオヘロの果実を集めました。

そして、この美味しい野生の果物で空腹を満たした時のことです。


カウノル村のカフナと出会う

カウノル村の白い髪のカフナ(神官)が、そこにいるではありませんか。
カアイアリイは、カフナが水を容器に入れて運ぶ様子を、じっと見つめました。

年配のカフナが、頑強な首長カアイアリイに気づいた時、カフナは恐怖におびえたようでした。

なぜならその場所は、カフナにとっての神聖な地、すなわち「逃れの地」ではないからです。
タブーを犯しても許される、「駆け込み寺」とは違うのです。

だからこそカフナは頭を深く下げて、ずんぐりした膝をしっかり抱え込んだのでした。
そして、悲嘆に暮れる首長に、喉(のど)をうるおす水を差し出しました。

カアラはどこに隠れた!

しかしカアイアリイは叫びました。

「私は水に飢えているのではない。
愛する人の姿を一目見ようと必死なのだ。

話してくれ、彼女がどこに隠れてしまったのかを。
そうすれば、神々に捧げる生贄(いけにえ)の、ブタ3頭と人を連れて来てやろう。」

海の洞窟があやしい

これを聞いて喜んだカフナは、こう答えました。

「たくましい長槍の名手よ!

あなたが、あの『パラワイの甘い花・カアラ』を捜していることは知っています。
しかし、彼女の居場所を知るのは唯一人、父親のオプヌイだけです。

彼は海に潜るのがとても上手く、幾つも隠れ家を持っています。

誰もいない時、彼は密かに海辺を出発するのです。
そして、魚の神たちと一緒に眠りにつくのです。

だから、あなたの愛する人がいるのは、この島の南岸でしょう。
なかでも一番あやしいのは、岩だらけの海辺にある洞窟です。」

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(ノート)
(N.1) パオマイ(Paomai), カウノル(Kaunolu), カルル(Kalulu), ケアリア(Kealia):
これらは、かつての行政区域(アフプアア(ahupua'a))の名称です。 いずれも、島中央の最高峰付近を起点とし、海岸に向かって細長く伸びています。
一方、カアイアリイは島中央付近を進んでいるので、これらの区域を次々と横切っているのです。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.