180 民話 カアラとカアイアリイ(32.パリカホロの大絶壁に立つ)

(前回からの続き)

パリカホロの大絶壁に立つ

英雄・カアイアリイは疲れた体にむち打って、ひたすら歩き続けました(*1)。
そしてその足を止めたのは、パリカホロの大絶壁上に着き、強風にさらされた時でした。


足元から百メートル近くも下の海面では、波が砕けていました。

カモメ や 甲高い声で鳴くアカハシネッタイチョウが見えます。
彼らは止まり木と緑色の波の間を、滑るように飛んでいました。


手がかりが無い

彼は右手の海岸を見上げました。
すると、ホノプの海面から突き出して柱のようにそびえ立つ、不思議な岩が見えました。


次に左を見ると、今度はカルルの険しい岩山が見えました。

しかし彼が愛する人の手がかりは、どこにもありませんでした。
--このままでは、彼女がどこに隠されたのか、わからない!

カアラよ! お前はどこにいるのだ?

すすり泣きうめくように、はるか遠くで打ち寄せる波の音に、彼の荒々しい気性が刺激されました。

その波は、悲しくも激しい彼の魂のために、歌っていたのです。
その歌が彼の脳裏に、愛する彼女の目、唇、ほお、そして柔らかい両腕を浮かび上がらせました。

すると彼はあざ笑うかのように、筋骨たくましい体を激しく伸ばしました。
そして、うめき声を上げ、すすり泣き、胸を叩きながら叫びました。

「カアラ!おおカアラよ! お前はどこにいるのだ?

魚の神々と一緒に眠っているのか?
それともお前に会うには、あの大きなサメの胃袋に入らねばならぬのか?」

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.