182 民話 カアラとカアイアリイ(34.カアラの声が遠ざかる)

(前回からの続き)

潮吹き穴をのぞく

カアイアリイは、以前オプヌイが飛び込んだ岩の上の、同じ場所に立っています(*1)。
足の下では、潮流が激しくぶつかり飛び跳ねながら、鼓動するのが感じられます。

カアラの姿が見えた水しぶきは目の前です。
彼は、その下で海水を噴き上げている、潮吹き穴をのぞきます。

穴の中は海水で浸食され、海面が激しく泡立っています。
それを見ている間に、彼の体は水しぶきで濡れてきます。

彼はこの荒々しく動いている水を、隅々まで漏らさず見ます。
しかし、カアラは見つかりません。


カアラの声が遠ざかる

それでもまだ、カアイアリイは彼女を求めて、荒れ狂う水の中を目を凝らして見つめます。
水しぶきの中に見えたあのカアラの姿が、今も彼の心を捕え、導いているのです。

たとえ海の神の怒りに触れようとも、彼は果敢に立ち向かう決意です。
彼はこの潮吹き穴の中で、喜んで、激情した熱い額を冷やすでしょう。

その時、彼の魂の中で、ある声が遠ざかって行くのが聞こえます。
すかさずカアイアリイが叫びます。

「どこにいるのだ、 ああ、カアラよ?
私はここだ、お前のところに来たぞ!」

こう叫びながら、彼は荒れ続ける海の、白く泡立つ激流に飛び込むのです。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.