183 民話 カアラとカアイアリイ(35.あの洞窟にカアラがいる)

(前回からの続き)

カアイアリイを愛するウア

英雄(カアイアリイ)が潮吹き穴に飛び込んだ時、ある人が彼の近くにいました(*1)。
その人こそがウア。 あの髪の毛がクラスタ・カールのウアでした。

彼女はこの首長を愛していました。

その彼が初めに潮吹き穴に飛び込もうとした時、大荒れの海が彼を遮(さえぎ)りました。
そして激流がうごめくなかで、彼もまた、大きなうめき声を上げたのでした。

この時、ウアは心の底でこう願いました。

「彼がもう一度、丘の上の林に戻ったら、どんなに素敵でしょう。
その時は、彼のために花輪を編み、手足を揉んであげましょう。
そして私の膝に頭をのせて、休ませてあげましょう。」

荒れ狂う穴に飛び込む

ところが、彼女がこう思った次の瞬間、彼はその荒れ狂う穴に、死のダイビングをしたのです。
そして、彼はもう姿を現わしません。

ウアは、カアイアリイのことを大声で泣きました。

しかし、この激しく流れ泡立つ海から、首長が立ち上がって出て来ることなど、最早ありませんでした。
そこで彼女はこう叫びました。

「ああ、彼はもう死んでいる!」

大王のもとに走る

ウアは大声で泣き叫びながら、悲しみのあまり髪をかきむしっています。
そして走りながら断崖絶壁上に戻ると、今度は海辺へと下り、ケアリアのタブーの地に着きました(N.1)。

彼女は大声で泣き続けながら、カメハメハ大王の足元にひれ伏しました。
それからウアが大王に、若い首長が亡くなったこと伝えると、大王は深く悲しみました。

あの洞窟にカアラがいる

ところが大王の近くには、神官のパパルアが控えていました。
そして国王に向かって、こう言ったのでした。

「おお、天国、そしてあらゆる島全体の首長である大王よ。

その場所です。カアイアリイが飛び込んだその場所は、オプヌイの海の隠れ家に通じているのです。

そこから深い海にある隠れ家までは、亀について行けば良いのです。
ですから、大王の勇敢な長槍使い(カアイアリイ)は、その洞窟の入口を知るでしょう。

そして私が思うに、彼はその洞窟の中で、
失った愛する人・カアラ、すなわちパラワイの花、を見つけるでしょう。」

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(ノート)
(N.1) ケアリアのタブーの地(tabooed ground of Kealia):
ケアリアには駆け込み寺(pahonua=pu'uhonua)があったことから、「タブーの地」、または「カプの地(ケアリア・カプ(kealia Kapu))」とも呼ばれました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.