185 民話 カアラとカアイアリイ(37.瀕死のカアラ)

(前回からの続き)

暗い洞窟のうめき声

最初、カアイアリイには何も見えませんでした。
しかし彼の耳は直ぐ、悲しそうで憐れなうめき声を捕えました。

甘く悲しいうめき声。
飢えた彼の耳に届いたのは、ずーっと探し続けていた、あのカアラの声でした。

愛するカアラが倒れている!

そしてそこには、ぼんやりと愛する人の姿が見えたのでした。
ヒンヤリして湿っぽく陰うつな所で、彼女は血を流し瀕死(ひんし)の状態でした。

彼は素早く彼女を抱き締めながら、気持ちを落ち着かせようとしました。
そして彼女を抱き上げると、空気がきれいな高い場所へ運ぼうとしました。

しかし、衰弱した哀れなカアラのうめき声を聞いて、彼は察知したのでした。
「彼女は海を泳いでいて、おぼれ死にそうになったのだろう。」

死ぬしかないのです

彼は腰を下ろして、彼女を両腕で抱えました。

すると、彼女が弱々しい声で言いました。
「ああ、私の首長。 これでもう、私は思い残すことなく死ねます!

私は不安だったのです。
『魚の神様に連れて行かれてしまったら、きっと、もう二度とあなたに会えない。』 と。

ウツボは私に咬みつくし、カニたちは私の体を這(は)い回ったのです。

それから必死の思いで海に出て、あなたを捜そうとしたのですが、
私の腕はか弱すぎて、激しい潮の流れに逆らえませんでした。

そして洞窟の入口に突き出た岩で、引き裂かれてしまったのです。

それだけでなく、恐ろしい神々が私を厳しく傷つけたので、
もはや、私は死ぬしかないのです。」

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.