(前回からの続き)
しかし彼の耳は直ぐ、悲しそうで憐れなうめき声を捕えました。
甘く悲しいうめき声。
飢えた彼の耳に届いたのは、ずーっと探し続けていた、あのカアラの声でした。
ヒンヤリして湿っぽく陰うつな所で、彼女は血を流し瀕死(ひんし)の状態でした。
彼は素早く彼女を抱き締めながら、気持ちを落ち着かせようとしました。
そして彼女を抱き上げると、空気がきれいな高い場所へ運ぼうとしました。
しかし、衰弱した哀れなカアラのうめき声を聞いて、彼は察知したのでした。
「彼女は海を泳いでいて、おぼれ死にそうになったのだろう。」
すると、彼女が弱々しい声で言いました。
「ああ、私の首長。 これでもう、私は思い残すことなく死ねます!
私は不安だったのです。
『魚の神様に連れて行かれてしまったら、きっと、もう二度とあなたに会えない。』 と。
ウツボは私に咬みつくし、カニたちは私の体を這(は)い回ったのです。
それから必死の思いで海に出て、あなたを捜そうとしたのですが、
私の腕はか弱すぎて、激しい潮の流れに逆らえませんでした。
そして洞窟の入口に突き出た岩で、引き裂かれてしまったのです。
それだけでなく、恐ろしい神々が私を厳しく傷つけたので、
もはや、私は死ぬしかないのです。」
(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.
暗い洞窟のうめき声
最初、カアイアリイには何も見えませんでした。しかし彼の耳は直ぐ、悲しそうで憐れなうめき声を捕えました。
甘く悲しいうめき声。
飢えた彼の耳に届いたのは、ずーっと探し続けていた、あのカアラの声でした。
愛するカアラが倒れている!
そしてそこには、ぼんやりと愛する人の姿が見えたのでした。ヒンヤリして湿っぽく陰うつな所で、彼女は血を流し瀕死(ひんし)の状態でした。
彼は素早く彼女を抱き締めながら、気持ちを落ち着かせようとしました。
そして彼女を抱き上げると、空気がきれいな高い場所へ運ぼうとしました。
しかし、衰弱した哀れなカアラのうめき声を聞いて、彼は察知したのでした。
「彼女は海を泳いでいて、おぼれ死にそうになったのだろう。」
死ぬしかないのです
彼は腰を下ろして、彼女を両腕で抱えました。すると、彼女が弱々しい声で言いました。
「ああ、私の首長。 これでもう、私は思い残すことなく死ねます!
私は不安だったのです。
『魚の神様に連れて行かれてしまったら、きっと、もう二度とあなたに会えない。』 と。
ウツボは私に咬みつくし、カニたちは私の体を這(は)い回ったのです。
それから必死の思いで海に出て、あなたを捜そうとしたのですが、
私の腕はか弱すぎて、激しい潮の流れに逆らえませんでした。
そして洞窟の入口に突き出た岩で、引き裂かれてしまったのです。
それだけでなく、恐ろしい神々が私を厳しく傷つけたので、
もはや、私は死ぬしかないのです。」
(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 15.Kaala and Kaaialii, A Legend of Lanai, W.M. Gibson.