189 プナホウの泉(1.美しい双子と義理の母)

(新しいお話しの始め)

「ワアヒラの雨」 と 「山の霧」

その昔、カアラの山に、カハアケアと言う名の首長が、住んでいました(*1)(N.1)。


彼には双子の子供、男の子と女の子がいましたが、彼らの母親は2人を産んで死んでしまいました。
男の子はカウアワアヒラ「ワアヒラの雨」、そして女の子はカウアキオワオ「山の霧」 と呼ばれていました(N.2)(N.3)。

父カハアケアは、母のいないこの子らを、大変優しく愛情を込めて育てていました。

そしてしばらくすると、彼は再婚しました。
子供たちには、身の回りの世話をしたり愛情を注いでくれる母親が、必要だと思ったからです。

2人を憎む義理の母

彼の新しい妻はハウェアと言い、前夫との間に一人の男の子がいました。
その子は体が不自由で醜かったのですが、双子の方はとても美しい子たちでした。

義理の母は、彼らの美しさに嫉妬していました。

彼らが皆から持てはやされることが、彼女には腹立たしかったのです。
しかも実の子は注目されるどころか、逆に顔をそむけられたのですから。

彼女は、双子の父親の前では、彼らに大変気を遣っていました。
しかし心の中では、彼らを嫌い激しく憎んでいたのでした。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) カアラ山 (Kaala):
「カアラ山」は、オアフ島の西側を走るワイアナエ山脈(Wai'anae)の主峰、標高1,227mでオアフ島の最高峰です。
(N.2) ワアヒラ (waahila):
「ワアヒラ」とは、ヌウアヌ(Nu'u-anu)とマノア(Manoa)の谷に降る雨の呼称です。
また、マノアとパロロ(Palolo)の谷を分かつ尾根の名前でもあります(Pukui et al.(1986):Hawaiian Dictionary) 。
(N.3) キオワオ (kiowao):
「キオワオ」とは、風と霧を伴う冷たい雨の呼称で、特にヌウアヌ谷に降る雨を指すこともあります(Pukui et al.(1986)) 。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ.The Punahou Spring. Mrs.E.M.Nakuina.