190 プナホウの泉(2.神のご加護を祈る)

(前回からの続き)

父は義母を信じ、安心していた

それは、双子の子供たちが十歳位になった時でした(*1)。
父はハワイ島に出かけるため、長い間、家を留守にすることになりました。

彼はその時、子供たちを妻と一緒に残すことに、何の不安も感じませんでした。

彼女はいつも、子供たちを大変愛しているように、振る舞っていたからです。
そして、彼らに対する本当の気持ちを、夫に知られぬよう、うまく隠し続けていました。

しかし、彼が遠く離れてしまうと、直ぐに彼女の様子が変わりました。
可哀そうな子供たちに、ちょっとした虐待を繰り返すようになったのです。

神のご加護を祈る

子供たちの実母は、死を前にして 「ウハエ・イア(uhae ia)」 だったようです。

そこで親族たちは神にお祈りしたり、神官にご祈祷してもらい、さらに断食なども行いました。
また、きれいに準備したブタや赤い魚をはじめ、あらゆるお決まりの食物が奉納されました。


そして、このように神様にお願いしたのでした。

「故人の霊の力をもっと強くして、親族をしっかり護(まも)らせ給(たま)え。
そして、この世の色々な出来事を操(あやつ)る力を、授(さず)け給え。」

ですから、たとえ義理の母が子供たちを虐待しようとも、
きっと実母の霊が彼らを助け、護ってくれることでしょう。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ.The Punahou Spring. Mrs.E.M.Nakuina.