192 プナホウの泉(4.クカオオの丘とカプ)

(前回からの続き)

クカオオの丘に住む

双子の子供たちは、義母が住む家には戻りませんでした(*1)。

彼らはマノア谷を走って下り、頂上にメネフネのヘイアウ(神社)がある、クカオオの丘に来ました(N.1)。
そして、その丘の斜面にある小さな穴に、隠れてしまいました。

しばらくの間、彼らはここに住んで、畑でサツマイモを作りました。


ここでの食物と言えば、その他にバッタやグリーンズがありました。
グリーンズとは、木の葉やポポロの若芽、アヘアへア、パカイ、ラウレレ、ツルハナナスのことです(N.2)。


これらを調理する時は、まず食材と加熱した石を容器に入れ、覆(おお)いをします。
それから、熱い石を食材の中でゴロゴロ転がして、蒸し焼きにするのです。

この方法は、プホロホロと呼ばれています。

聖なるカプと自由なノア

イモなどの根菜類が柔らかくなると、男の子である「ワアヒラの雨」が、ダブルのイム(オーブン)を作りました(*2)。
このイムは、「カプ」と「ノア」と呼ばれる、2つの部分から出来ています。

「カプ」は神聖な部分で、ここには男の子が食べる食物だけを入れます。
一方、「ノア」は自由な部分で、こちらには女の子の食物が入ります。

それだけではありません、彼らが住む小さなほら穴も、2つに仕切られました。
そして、神聖な部分は男の子の場所、自由な部分は女の子の場所になりました。

その昔のハワイ社会では、男性が食事をする場所に、女性が姿を見せるのはタブーとされ、厳しく禁じられていたのです。

今も残るほら穴とイム

彼らが住んでいたほら穴は、今も見ることが出来ます。

そして、つい数年前まで、ほら穴を2つに仕切る石の壁も、元のまま残されていました。
同じように、ダブルのイムも残っていました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) クカオオ・ヘイアウ (Kukaoo Heiau) :
クカオオ・ヘイアウは、最近、石積の壁が復元され、国家歴史登録財の一部に指定されました。場所はC.M.クックJr.邸 (通称:クアリイ)がある、マノア・ヘリテージ・センター(2859 Manoa Rd.)内です。

(N.2) グリーンズ (greens) :
・ポポロ(popolo)(学名:Solanum nigrum)の和名はイヌホウズキですが、バカナスとも呼ばれています。ホオズキやナスに似ているが役に立たないことに由来する名だそうです。
・アヘアへア(aheahea)(学名:Chenopodium oahuense)はハワイ固有種ですが、ハワイでは大半の島に見られ、その葉は食用とされて来ました。
・パカイ(pakai)(学名:Amaranthus viridis)は、ジャマイカ、インドなどでも葉が食用とされています。日本でもよく見られますが、雑草とされています(和名:ホナガイヌビユ)。
・ラウレレ(laulele)(学名:Asclepias curassavica)。
・ポテト・バイン(potato vine)(学名:Solanum laxum)は、白から薄紫に咲く花が人気で、主に観賞用に栽培されています(和名:ツルハナナス)。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ.The Punahou Spring. Mrs.E.M.Nakuina.
(*2) J.S. Wiliams(1997): From the Mountains to the Sea, p.63.