193 プナホウの泉(5.プナホウのほら穴へ)


(前回からの続き)

また義母が現われる

彼らの農作物が順調に実った、その時のことです(*1)。
あの義母がまた、彼らを見つけたのでした。

義母は双子の子供たちを、彼らが住んでいたほら穴から追い払いました。
その上、小作人たちが収穫した農産物を奪い取ったのでした。

プナホウの丘のほら穴へ

子供たちは、プナホウのすぐ裏にある、岩肌の丘へ逃げました(N.1)。

そこで彼らは小さなほら穴を2つ見つけました。
こうして男の子と女の子は、各々、1つずつのほら穴に住み始めました。

ほら穴の周辺には、緩やかな起伏や小さな谷間が幾つもあります。
この地は後に、美しい牧草マ二エ二エで覆われ、「プナホウ牧草地」の名で知られた場所です(N.2)。


しかし彼らが住み始めた時は、美しい牧草地ではなく、自然のままのの藪地(やぶ)でした。

藪地で食材を採る

そこには、灌木(かんぼく)や少し丈が高いイリマ、さらにはアヘアへア、ポポロなどが密生していました(N.3)。
それらがない場所には、かつて有益な薬草とされた、マ二エ二エ・アキアキが生えていました(N.2)。


生い茂る灌木は食用になる実をつけたり、花を咲かせたりします。
またその葉や若芽は、調理すれば滋養物となるので、食物として役立ちます。

その調理方法につては、以前お話ししました。

可愛そうな双子の子供たちは、これらの果実やグリーン、バッタ類、また時には、野鳥を捕って食べていました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) プナホウ(Punahou) :
プナホウとは、ワイキキの北、マノア谷の入口にある土地の呼称です。
現在この地は、オバマ大統領が学んだプナホウ・スクールがあることで知られています。
(N.2) マ二エ二エ(manienie), マ二エ二エ・アキアキ(manienieakiaki) :
マ二エ二エ(学名:Cynodon dactylon,英名:Bermuda grass)は世界中の暖地に広く分布し、日本でも芝生や牧草として広く用いられています。
マ二エ二エ・アキアキ(学名:Sporobolus virginicus,英名:seashore dropseed)はハワイ在来種です。古くは薬草として、乳幼児の舌などに白い斑点が出来る感染症の治療に使われました。
(N.3) イリマ(ilima) :
イリマ(学名:Sida fallax,英名:ilima)の花弁と根は、病気による衰弱の回復に効果があるとされました。またイリマは、かつては王族だけが身につける高貴な花とされていました。しかし今ではオアフ島の花にも指定され、多くの人々に親しまれています。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ.The Punahou Spring. Mrs.E.M.Nakuina.