194 プナホウの泉(6.水を引きたいのです)

(前回からの続き)

水浴びをしたい

ある日、双子の女の子(カウアキオワオ)、カウアキオワオが、男の子に不満をぶつけました(*1)。

「私は水浴びをしたいわ!
どうしてこのような、水が少しも無い場所に住んでしまったの?」

すると、男の子はこう言って、不満そうな彼女をなだめました。

「いや、ここは安全な場所なんだ。
ここに居れば、義母にも見つからないと思うんだ。」

しかし、こう言いながらも、男の子は何とかして、女の子に水をあげたいと思いました。

あの池から水を引こう

彼は日頃から、果物や木の葉、青草などを探して、自分たちが住む丘の近くを歩き回っていました。
ですから、丘の東の方に大きな雨水池があるのを、知っていました。

その池はカナワイと呼ばれていました。
時々そこに来ては、野生のアヒルを輪なわで捕まえた池でした。

さらにまた彼は、以前、水の神(カケア)に会ったことがあり、知り合いでした。
神は2つの谷、マノアとマキキの水の全てを託され、その管理をしていました。

その神は、モオと呼ばれる彼らの守護神でもあり、双子の母方の先祖の1人でした(N.1)。
そして男の子(ワアヒラの雨)とは、とても親しい間柄でした。


水の神にお願いする

男の子はこの神を訪ねて、こうお願いしました。

「あのカナワイの池から『この場所』まで、水路を造りたいのです。
どうぞ、お力をお貸し下さい。」

彼が『この場所』と言ったのは、双子の2人が住むほら穴の前のすぐ下でした。

これを聞いた高齢な水の神は、若い親族の願いを快く引き受けるだけでなく、こう約束してくれました。

「近くにあるワイレレの泉の水も、分けてあげよう。
そして、お前が造る水路に流してあげよう。

そうすれば、水路には永遠に水が流れ続けるだろう。」


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) モオ(Moo) :
モオ(mo'o)は、アウマクア('aumakua)と呼ばれる守護神(家族神)の一つです。
アウマクアでは、先祖がこの世に現われる時、色々な動物や植物などに化身します。
その中で、小さなトカゲから大きな爬虫類、さらには竜などに化身した守護神を、モオと呼びます。
モオには天候や水をコントロールする力があり、養魚池(fishpond)などに住むと言われます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ.The Punahou Spring. Mrs.E.M.Nakuina.