196 プナホウの泉(8.荒れ地がカロ畑に変わる)

(前回からの続き)

荒れ地がカロ畑に変わる

その後、男の子(カウアワアヒラ)は、カロ(タロ)の畑を幾区画か作りました(*1)。

人々は豊かな水に魅せられ、また、水のお陰で肥沃になった、その土地に魅せられました。
そして次々とこの地にやって来ては、住み着くようになりました。

彼らは自ら進んで、双子の子供たちの農奴となり、この豊かな地で働きました。

荒れ地が次々と開墾されて、カロ畑に変わりました。
こうしてこの地は、新しい入植地として栄え始めたのでした。


そのなかで男の子が造った泉は、「カ・プナホウ(新しい泉)」 と呼ばれるようになりました(N.1)。
そしてその名は入植地だけでなく、その周囲に住む人々にも知られて行きました。

父が義母の虐待を知る

ちょうどその頃、双子の子供たちの父カハアケアが、ハワイ島から帰って来ました。

そこで彼は、義母による虐待の噂を耳にしたのです。
自分がいない間ずーっと、愛する子供たちが虐待され続けていた、と言うではありませんか。

この話を聞いた彼は、すぐさま義母ハウェアを殺し、さらに自分も自殺してしまったのです。

今も残る「ロッキー・ヒル」 と「ハウェア」 の語

「ロッキー・ヒル」とは、子供たちが住んでいた、あの岩肌の丘の名前です。
それは、子供たちの父カハアケアの、頑強な意志に因(ちな)んで命名されたものです。

今でもその丘は、「ロッキー・ヒル」と呼ばれています。

一方、「ハウェア」は、子供たちの義母の名前です。
今お話ししているこの出来事以来、ハワイアンの心の中では、「ハウェア」は「残酷な義母」を指す語とされています。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(ノート)
(N.1) カ・プナホウ (Ka Punahou) :
"ka"はハワイ語の定冠詞です。また (ハワイ語)punahou=puna+hou= (英語)spring+new= (日本語)泉+新しい、ですから、 "Ka Punahou"は 「新しい泉」 を意味します(*2)。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅻ.The Punahou Spring. Mrs.E.M.Nakuina.
(*2) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.