198 アフウラ(1.俊足の使者クキニ)

(新しいお話しの始め)


「クキニ」はプロの使者

エレイオは、マウイ島の王カカアラネオに仕える、クキニ(鍛え上げた使者)でした(*1)(N.1)。
当時の王や有力なアリイ(首長)たちは、いつも数人のクキニを召し抱えていたのです。

どこに行けと言われようと、彼らはいつも目的地を目指して一直線に進みました。
丘を登る時は山羊(ヤギ)のように機敏で、岩や小川を飛び越え、断崖絶壁からも飛び降ります。


ラワルを焼く暇も無い

彼らがあまりに俊足だったので、土地の人々はその様子を、こんな風に言ったものでした。

「普通の人がまる一昼夜かかりそうな所でも、クキニを使いに出せばあっという間だ。

何しろ、キーの葉(テイー・リーフ)で魚を包み(『ラワル』にして)、
クキニが出発する時に火にかけると、
まだ片面も十分に焼けないうちに、もう戻って来るんだから。」

特別の待遇を受ける

このように首長にとって、クキニたちは大変役に立つ存在でした。

一方、クキニたちはいつも高く評価され、自由を満喫することが出来ました。
厳格な礼儀作法・しきたり、さらにはハワイ法廷の習慣法・判例にも縛られなかったのです。

また彼らのご主人の所持品には、価値のある物がほとんど無いので、盗もうとしても無駄でした。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) カカアラネオ(Kakaalaneo):
カカアラネオは当時のマウイ島の王で、このお話し以外にも、幾つかの伝説に登場します。
島の南東部ラハイナ(Lahaina)に近いケカア(Keka'a)に住んでいたと伝えられています(*2)。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E.M.Nakuina.
(*2) Martha Beckwith(1970): Hawaiian Mythology, Mok.27 Ruling Chiefs.