200 アフウラ(3.女性の魂に頼まれる)

(前回からの続き)

高貴な人の風葬場プオア

エレイオが彼女に追いついたのは、あるプオアの入口でした(*1)。

プオアとは、ちょっとした塔のようなものです。
普通は竹で出来ていて、半分ぐらいの高さの所に床があります。

その上には、高貴な人々の死骸が横たわっています。
家系または階級が同じ人たちが、一緒に風葬されているのです。

女性の魂と言葉を交わす

追いつかれた若い女性は、彼の方を向いてこう叫びました。

「私を生かして下さい! 私は人間ではなく、魂なのです。
そして、この入れ物(人間の体)の中こそが、私の棲み処(すみか)なのです。」

彼は答えました。

「しばらく前から、あなたが魂だと気付いていました。
なぜって、私を振り切ってあんなに速く走れる人間など、いるはずがないから。」

両親に伝えて下さい

それから彼女は言いました。

「私たち、お友達になりましょう。
あの遠くに見える家に、私の両親と親戚の人たちが住んでいます。

今から、あの人たちの所に行って、こんな風に頼んで下さい。
『大きなブタを1頭、カパ布、ファイン・マットをいくらか、それにフェザー・クロークが欲しいのです(N.1),(N.2)。』


そして私のことを話して、私がこう言っている、と伝えて下さい。
『その品々は、全て彼にあげます。』

フェザー・クロークはまだ未完成

フェザー・クロークは、まだ出来上がっていません。
それは、今は未だ1辺が約2.7mの正方形ですが、約3.6mにまで大きくする予定です。


それに必要な鳥の羽と繊維の網は、十分な量が家にあります。
ですから、それを仕上げるように、言って下さい。」

こう話し終えると、魂は姿を消してしまいました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ファイン・マット(fine mat):
ファイン・マットは、長時間かけて細い繊維を編み上げた高級マットです。
ハワイと同じポリネシアのサモアでは、イエトガ('ie toga) と呼びます。
かつてはファイン・マット、カパ布そしてブタなどが、儀礼用品とされていました。

(N.2) フェザー・クローク(feather cloak):
フェザー・クロークとは鳥の羽で飾ったマントのことで、ハワイ語では アフウラ('ahu'ura) と言います。
かつてアフウラを身につけることが許されたのは、階級社会の最上位にいた、首長(ali'i)だけでした。
アフウラを作るには、まずオロナ(olona)などの繊維で網を作り、次にその表面を羽で覆うように飾り付けました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E.M.Nakuina.