202 アフウラ(5.小屋と祭壇を作る)

(前回からの続き)

ちょっと待って下さい

両親は直ぐに、エレイオを養子にすることにしました(*1)。
そこで大きなブタを殺して、アハアイナ(祝宴会)をしよう、と話し始めた時のことです(N.1)。

エレイオが、こう言いました。

「ちょっと待って下さい、その前に私に教えて欲しいのです。
ここにいる人たちは皆、あなた方の仲間ですか?」

親族は信頼できる

両親は口を揃(そろ)えて、こう答えました。
「彼らは私たちの親族です。

-- 叔父、叔母、そしてあの魂(娘)の従兄弟たちです。
彼らは既にあなたを、娘の夫または親族、と見なしているようです。」

すると、エレイオが聞きます。
「たとえどんな事であろうと、彼らはあなた方に従いますか?」

「彼らは信頼できる人たちです。」と両親が答えました。

ラナイと祭壇を作る

エレイオは彼らに、大きなラナイ、すなわち仮小屋を作るように、指示しました。

そしてそのラナイを、シダ、ジンジャー、マイレ、イエイエで完全に覆わせました(N.2)。
--これらは甘い香りを漂わせる緑の葉で、この島々に生い茂っています。


そのラナイの一番奥には祭壇が作られ、見事に飾り付けられました。

その間、だれもが皆、彼の指示に喜んで従いました。
男たち、女たち、そして子供たちも、彼の言う通りに働いたのです。

お陰で2,3時間もすると、建物が完成しました。

祭壇に供物を捧げる

いよいよエレイオは、あの大きなブタを焼き始めるよう、指示しました。

さらに色々な供物を、祭壇に捧げさせました。

-- 調理済の赤と白の魚、そして、赤、白、および黒の雄鶏、
それから、レレとマオリ種のバナナです(N.3)。



(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) アハアイナ(ahaaina):
アハアイナ('aha'aina)は、かつて結婚や戦勝などを記念して催された祝宴会です。
現在はルアウ(lu'au)と言う名前で、特別なお祝いの時や、観光客向けに行われています。

(N.2) マイレ(maile), イエイエ(ieie) :
マイレ(学名:Alyxia stellata)は、香り高いレイ素材として、古くから愛用されて来ました。また、カパ布に香り付けする際にも、マイレが使われました。
イエイエ(学名:Freycinetia arborea)は、長さ40~80cmの細長くて緑色に輝く葉を持っています。かつてフラの祭壇には、イエイエの枝が供えられていたそうです。

(N.3) レレ(lele) :
レレ(学名:Musa x paradisiaca)は、数多くあるバナナの品種の一つです(*2)。
かつては、住居の近くではなく、ヘイアウ(神社)に植えられ、神に捧げる供物とされていました(*3)。
そして、レレの精は神々のもとに飛んで行く、と考えられていました。
一方、住居の近くに植えると、そこに住む人々の魂が、どこか遠くに飛び去ってしまう、とも言われたそうです。


(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E.M.Nakuina.
(*2) M. K. Pukui, S. H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.
(*3) R.C.Ploetz et al.(2007): Banana and plantain, an overview with emphasis on Pacific island cultivars.