207 アフウラ(10.イム焼きを逃れる)

(前回からの続き)

もしも日暮れまでに戻らなかったら

2人の旅は、カニカニアウラの体力に合わせて、ゆっくりでした(*1)。
彼女の魂は肉体と合体したので、魂だけだった時のように速くは歩けないのです。


ラウニウポコまで来た時、エレイオは彼女の顔を見ながら、こう言いました。

「ここから先は、私が1人で行きます。
あなたはここで、灌木の茂みの中に隠れて待っていて下さい。

もしも、日が暮れるまでに戻らなかったら、私はきっと死んでいるでしょう。
その時は、ここに来た道を戻って、あなたの仲間たちの所に行きなさい。

しかし、もしも万事うまく行けば、しばらくすれば私は戻って来ます。」

イム焼きを逃れる


こうして、彼は1人だけで先に進んで行きました。

そしてラハイナとの境にある、マキラに着いた時のことです。
何人かの人々が、「イム」と呼ばれる地下オーブンを加熱していました(N.1)。

彼らがエレイオに気付くと、彼の手足を縛って、生きたままイムで焼こうとしました。
それが王の命令だったからです。

しかしエレイオは、王の命令に代えて、彼らにこう命じました。
「王の足元で死なせてくれ!」

こうして彼は、イムで焼かれることから、うまく逃れたのでした。

王の前に立つ

ついにエレイオが、王カカアラネオの前に立った時、王が言いました。

「これは一体どうしたことだ?
なぜお前は、生きたまま焼かれないのだ? -- 私の命令だぞ。

我が家臣よ、お前に一体何が起こったのだ?」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) イム(Imu):
「イム」とは地面に穴を掘って、その底に加熱した石を敷いた、地下オーブンです。
「民話 カハラオプナ」では、死刑判決を受けたカウヒらが、このイムで焼き殺されます。
このオーブンを使った伝統的調理法は、今でも受け継がれており、豚を丸焼きにする際などに使われます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 14. Ahuula ; A Legend of Kanikaniaula and the First Feather Cloak, Mrs. E.M.Nakuina.