211 カネアウカイ(2.人に似た丸太)

(前回からの続き)

人に似た丸太を持ち帰る

ここでお話を、カネアウカイ神の信奉者に戻しましょう(*1)。
そうです、お祈りが務めだった、あの2人の老人です。

ある朝、彼らが海辺を歩いていると、一本の丸太が落ちていました。
その形がどこか人のように見えたので、家に持ち帰ることにしました。

彼らの粗末な小屋の中で、その丸太は小屋の隅に据(す)えられました。
そしてこれまでと同じように、カネアウカイ神に祈りを捧げる生活が続きました。

ささやかな夕食の準備

ある夕方、彼らはささやかな夕食の準備をしていました。



ポイと塩、それに調味料として、あぶったククイナッツを数個添えました。



それから、いつもの飲み物、ココナッツ・カップに注いだ2人分のアヴァです。

ところが、これらの準備が出来上がった、ちょうどその時です。
一人のハンサムな若者が、こちらにやって来るのが見えました。

私はカネアウカイ神です

若者は、小屋に入ると彼らに挨拶しました。
そして、こう名乗ったのでした。

「私は、あなた方が日々祈りを捧げている、カネアウカイです。
そして、あなた方がこの小屋に据えたあれは、私の像なのです。

あの像にあなた方は、良く心遣いしてくれました。」

神と夕食を共にする

こう言うと、若者はそこに座りました。
これはハワイの習慣で、一緒に夕食をしようとする時のしぐさです。

そこで2人の老人は、若者を夕食に誘いました。
そして、残念ながらアヴァを切らした、と釈明しました。

すると若者が言いました。
「あなた方のアヴァをボール(容器)に戻し、改めて3人で分けましょう。」

老人たちは若者に従い、直ぐに彼らの食物を、客人である若者と分け合いました。



あなた方に十分な魚をあげよう

夕食の後、カネアウカイ神が2人の老人に言いました。

「ケアワヌイに行きなさい。
そうすれば、当分のあいだ十分食べれるくらい、魚が捕れるでしょう。」

こう言い終えると、カネアウカイ神は姿を消してしまいました。

人々が大漁に沸く

老漁夫たちは教えられた場所に行き、3匹の魚を捕まえました。

そこで1匹を、近くに住む老女呪術(じゅじゅつ)師にあげました。
そして残った2匹は、自分たちにとっておきました。

そのしばらく後、モクレイアの漁師たちが、魚の大群を捕まえました。

余りにも大漁だったので、彼らは出来る限りの魚を塩漬けにしました。
それでもまだ、近所の人たちにあげる魚が、十分にありました。

そして犬にまで、食べきれぬほどの魚が与えられたのでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 23. Kaneaukai: A Legend of Waialua. Thos. G. Thrum.