212 カネアウカイ(3.ワイメア渓谷に神像を据える)

(前回からの続き)

ワイメア渓谷に住むカフナ

モクレイアの人々には、めったにない大漁を楽しんでもらうことにして、
私たちは、2人のカフナが住む地に移動しましょう(*1)。

そこはオアフ島のワイメア渓谷の南側で、2人のカフナは漁師でもありました。


港で網を打つ

ある朝、魚を切らした彼らは港に行き、運だめしに魚網(ぎょもう)を打ちました。
すると網にかかったのは、人の頭ほどもある大きな石灰岩の石が1つ、それとブリモドキが一匹でした(N.1)。


彼らはブリモドキを放してやり、それから、石を海に投げ返しました。

そして、彼らは再び網を打ちました。
するとまた、あの石とあのブリモドキが、かかりました。

さらに3度目に引き上げた網も、また同じでした。

この石はきっと神の像だ

そこで彼らは、こう考えたのでした。
「この石はきっと、ある神を象徴する像に違いない。」

そして、2人のうちの年配の者が言いました。
「この石を陸地に持ち帰ろう。そして神像として据えよう。
しかし、このブリモドキは放してやろう。」

断崖に神像を据える

そして彼らは、その通りにしたのでした。
そうです、持ち帰った神像を、ワイメア湾の南側にある断崖の角(かど)に、据えたのです。

それから、神像の周りに囲いを作りました。
さらに、ごつごつした断崖の上面をならして、平らにしました。

その際、平らな石を何枚も敷き並べたのですが、
不思議なことにその石は、神像のすぐ近くにありました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ブリモドキ(pilot fish):
ブリモドキ(学名:Naucrates ductor)は、その名の通りブリに似た魚です。
また英名はパイロット・フィッシュで、大型魚や船などに付いて泳ぐ習性、があることを示しています。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 23. Kaneaukai: A Legend of Waialua. Thos. G. Thrum.