214 カネアウカイ(5.木像は焼かれ石像が残る)

(前回からの続き)

流れ星に導かれて進む

若者たちはモクレイアに向けて出発しました(*1)。


彼らは途中、カイカを通りました。
そこは、数年前まで塩が作られた場所の近くです(N.1)。

この地域に詳しくない彼らは、どの道を行くべきか迷っていました。

すると目の前に流れ星が現われ、矢のように走り抜けて行きました。
その光に導かれて、彼らは底なし沼を避けることが出来たのです。


モクレイアの木像を据える

こうして川を渡り終えた彼らは、カネアウカイ神に指示されるまま、モクレイアを目指して進みました。
そして、あの2老人が住む小屋の中で、木像を見つけたのです。

彼らはその木像を背負うと、運べる限り魚の干物を買い込みました。
そして来た時と同じ道をたどり、家に帰り着いたのは真夜中近くでした。

翌日、2人の老カフナたちが、その木像を据え付けました。
そこはカネアウカイ神を象徴する石像を据えた、あの囲いの中でした。

木像は消えたが石像は残った

ところがその木像は、今よりずーっと前に姿を消してしまいました。

恐らく摂政カアフマヌがオアフ島を巡回した時に、破壊されたのでしょう(N.2)。
そうです、彼女がキリスト教に改宗し、全ての偶像を焼却するように命じたのです。


一方、石像は破壊されませんでした。
そしてこの60年間、地下オーブンで焼いたブタが、供え続けられています。

この奉納は、首長たちに見つからぬよう、密かに行われました。
と言うのは彼らが、偶像崇拝を禁止する法令を発したからです。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 塩が作られた場所:
このお話しの第1回 「1.豊かなモクレイアの海」 で紹介された、「パウカウウィラ(Paukauwila)の塩田」を指すと考えられます。
(N.2) カアフマヌ (Kaahumanu):
カアフマヌは、カメハメハⅠ世の妻の1人です。
Ⅰ世の死後、彼女はⅡ世の摂政(クヒナ・ヌイ)となり政治の実権を握ると、カプ(タブー)の禁止を宣言すると共に、ハワイ古来の宗教を禁止しました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 23. Kaneaukai: A Legend of Waialua. Thos. G. Thrum.