215 カネアウカイ(6.本当にあった出来事だ)

(前回からの続き)

本当にあった出来事だ

「このお話は、いろいろな人により伝承されて来ました(*1)。
そしてその内容は、語り手により若干異なっています。

と言うのは、語り継がれるなかで、彼らが独自の誇張を盛り込むからです。」

と言いながらも、ワイアルアの助祭(じょさい)はとても善良な男で、こう信じているようです(N.1)。
『これは伝説などではなく、本当にあった出来事だ。』


なぜなら、助祭にこのお話をした老人が、こう言ったからです。
「モクレイアへ行って木像をワイメアに持ち帰った、あの若者の1人は私自身の祖父だ。」

地元のお年寄りの話

その地に住むあるお年寄りは、こんな風に話してくれます。

「あの2人の男は、不思議な出来事の中で見つけた石を安置した後、カネアウカイの夢を見たのです。
それは、どこかはるか遠い地の神です。

彼らはその神の石像を、汗を流しながら見事に安置しました。
そこで、その労が報われて沢山の魚が捕れるようにと、神に祈願しました。
 

彼らは神に仕え続けた

このように夢見ていると、既に彼らが住む岸辺に来ていた、カネアウカイが現われました。

そうです。あの石こそが、彼らの祈願に応えて姿を現わした、神だったのです。
彼らが見つけることを許され、ケハウアプウに安置するという栄誉を与えられた、あの石です(N.2)!

そして、彼らはこれまで真心を尽くして、この神を信仰して来ました。
神に我が身を捧(ささ)げて、お供え物を上げ祈り続けたのです。

ですからその後ずーっと、彼らは豊漁に恵まれて当然だったのです。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ワイアルア(Waialua):
かつてのオアフ島は6つのモク(地区)から成り、その中の1つがワイアルアで、島の北部を占めていました。
1853年、そこにあったモクと同じ名の町ワイアルアに、ノースショア初のカトリック教会が建設されました。
本文で言う「ワイアルアの助祭」は、この教会に所属していたと推測されます。
(N.2) ケハウアプウ(Kehauapuu):
ケハウアプウは "Ke-ahu-o-Hapu'u"とも呼ばれる漁業のヘイアウ(heiau)で、ワイメア川の河口近くの断崖上にあり、カネアウカイ神の石を安置していました(*2)。
なお、川を挟んだ対岸の丘の上には、オアフ島最大の規模を誇る、戦いのヘイアウがあります。


(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 23. Kaneaukai: A Legend of Waialua. Thos. G. Thrum.
(*2) Index to Sites of Oʻahu, the 1978 edition, Bishop Museum Publication, Indexed by Dennis Ladd.