223 カペエペエカウイラ(7. カナを訪ねる)

(前回からの続き)

ハカラニレオがやって来る

こうして、ハカラニレオとニヘウの2人は、島の奥地に向けて出発しました(*1)。
しかしニヘウは、父よりも先にどんどん進んで行きました。


そして、ウリに育てられた男・カナに会うと、こう伝えました(N.1)。

「ほら見て! そこにハカラニレオがやって来るよ。
妻を盗(と)られたんだ。
もう、わしらは皆、疲れ果てたよ。」

「え? どこだ。」 と、カナが尋ねました。
「ほら、ここ。ちょうど今、着いた所だ。」

恐ろしい目に尻込みする

カナはじっと外を見つめました。
ハカラニレオは、カナの激しく燃える視線を受け、恐ろしさのあまり後ずさりしました。

すると、ニヘウがこう注意しました。
「なぜ、もう少し待てなかったんだい? --- いきなり、わしらの父を見つめるなんて!

ほら、すっかり怯(おび)えてしまって、後ずさりしてるじゃないか。」

大粒の涙が降り注ぐ

こうニヘウに非難されたので、カナは家の中にいながら、片手だけを前に差し出しました。
そして遠く離れた老人をしっかり掴(つか)むと、手元まで連れ戻して膝の上に座らせました。

それからカナは、涙を流して泣いたのでした。
すると生意気なニヘウが、こう言いました。

「今、あんたは泣いてるけど、そのお年寄りのことも考えろよ。
このままじゃあ、ずぶぬれになってしまうぜ。」

しかしカナはニヘウに、ぐずぐずせず早く火をつけよ、と命じました。
と言うのは、カナの涙はちょうど平原を浸す、冬の大粒の雨のようだったからです。

(次回に続く)
[目次へ戻る]

(ノート)
(N.1) ウリに育てられた男・カナ(Kana, the foster son of Uli):
カナはニヘイの兄ですが、祖母であるウリに育てられました。ウリと言う名は、彼女が有名な恐ろしい女神であることを象徴しています(*2)。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.
(*2) A. Fornander and T. Thrum(1816): Fornander collection of Hawaiian antiquities and folk-lore. Vol. 4, PartⅢ,Chap.9,Chap.I Legend of Kana and Niheu,p.435(脚注5).