225 カペエペエカウイラ(9. カヌーが出来た)

(前回からの続き)

あの灌木を引き抜けるか?

これを聞いたカナは、一本の小さな木を指差して、ニヘウにこう言いました(*1)。
「お前、あの木を引き抜けるか?」

「出来るとも。」 とニヘウが答えました。
というのは、それはただの、1本の小さな木だったからです。

「わしの手にかかりゃあ、あんなもの、すぐに根こそぎだ。」 と彼は自信満々でした。

そんなんじゃあ敵を倒せぬ

ニヘウはまずその木をつかんで引っ張り、次に強く力を込めて、地面から引き抜こうとしました。
しかし彼の豪腕をもってしても、その木はびくともしませんでした。

それを見ながら、カナがからかうように言いました。
「そんなもんじゃあ、敵をやっつけれないぞ。」

カナがカヌーを造る

それからカナは、両手を森の中に伸ばすと、何かを引っ掻(か)き始めました。

そして暫(しばら)くすると、片方の手に一艘(そう)のカヌーを持っていました。
さらにもう暫くすると、残りの手から、もう一そうのカヌーが現われました。

この良く似た2そうのカヌーは、「カウムエリ」と名付けられました。

彼はそのカヌーを岸辺まで降ろして、パドルを取り付けました。
それから、漕手(こぎて)として14人を雇いました。

こうして彼らは、カペエペエカウイラと戦うために、出発したのでした。



(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.