228 カペエペエカウイラ(12. カヌーが浅瀬に着く)

(前回からの続き)

マストが枝にからまる

そしてついに、深い夜の闇の中から夜明けの兆(きざ)しが、かすかに顔をのぞかせ始めました(*1)。
ちょうどその時、彼らの帆柱(マスト)が、木々の枝に引っかかってしまいました。

ニヘウは石をつかむと、上に向かって荒々しく投げ放ちました。
石は勢い良く木の枝にぶち当たります。

すると何本もの枝が、ガサガサと音を立てながら落ちて来て、マストは自由になりました。

カヌーが浅瀬に着く

こうして彼らはさらに進み、やがてカヌーは静かに泊まりました。
するとニヘウが叫びました。

「さあ着いたぞ。おー、カナよ。また眠ってたのか。
もうカヌーは浅瀬に泊まったぞ。」

絡まった雑草を取る

カナはまず、足元の感触を確かめました。
そこはまだカヌーの中で、地面ではありませんでした。

次に頭の上の様子を探りました。
するとカヌーのマストに、雑草が絡(から)まっていました。

それをグイッと引っ張ると、雑草と土が一緒に落ちて来ました。

あのバカでかいカヌーは何だ!

その引き裂かれた雑草から、新鮮な香りが立っています。
そしてカペエペエカウイラが住む家のある、ハレフキまで漂って行きました。

彼の部下たちはハウプの頂上から、足下の岸に浮かぶカヌーを見下ろしました。
「あのカヌー、バカでかいぞ!」 と彼らは叫びました。

「あー! ありゃオピヒ(貝)だ。ヒナのためにハワイ島から来た荷物だよ(N.1)。」

と言うのは、オピヒは彼女の大好物だったからです。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) オピヒ(Opihi):
オピヒはハワイのアワビとも言われる一枚貝で、波の荒い岩場に生息しています。


昔からハワイの人々の大好物ですが、オピヒ狩りは今でも毎年水死者を出す、危険な作業でもあります。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.