229 カペエペエカウイラ(13. ニヘウの上陸)

(前回からの続き)

滑って転んだのさ

そうしている間に、カナは母を捜しにニヘウを送り出しました(*1)。
「仲良くするんだぞ。」 と、カナが言いました。

ニヘウはピョンと、カヌーから岸へ飛び降りました。
しかし、つるつるの岩で足を滑せ、倒れてしまいました。

慌(あわ)てたニヘウは、一目散にカヌーに引き返しました。

「何だって引き返したんだ?」 とカナが問いただします。

「滑って転んだのさ。危うく死ぬところだったぜ。」 とニヘウが答えました。

「戻るんだ!」 とカナが怒鳴り散らしました。

カニに砂をかけられる

そこでニヘウは、再び岸へ飛び降りました。


しかし今度は、運の悪いニヘウの前で、ツノメガニが砂を引っ掻きました(N.1)。
その舞い上がった砂のお陰で、彼の目は砂だらです。

彼は再びカヌーに引き返して行きました。

「目の中に入った砂を全部、取ってくれ!」
と言うと、砂を海水で洗い流しました。

「このばか者め!」 カナが叫びました。

「お前、下なんか見ていて、一体何を探すつもりだ?
ツノメガニは鳥なんかじゃあないぞ。

上を見るんだ。
お前が上を見てさえいれば、目に砂なんか絶対に、入らなかったんだ。
さあ、もう一度行け!」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ツノメガニ(Ohiki-makaloa):
ツノメガニ(学名:Ocypode ceratophthalmus)は、砂浜に住むスナガニ属の一種で、日本では沖縄諸島で見られます。
和名「ツノメガニ」は、複眼上の突起が「角」のように見えることに由来します。
この角が細長い目のようにも見えることから、英名は "long-eyed sand-crab" すなわち「長い目の砂蟹(スナガニ)」です。
ハワイ語名「オヒキ・マカロア(ohiki-makaloa)」は英名と同じ由来で、ʻō.hiki=スナガニ, maka=目, loa=長い、から成ります。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, Ⅷ. Kapeepeekauila; or, The Rock of Kana. Rev. A.O. Forbes, p.63-73.