253 アイ カナカ(8.お前の主張は神聖だ)

(前回からの続き)

サメの口の中へ

さあ、恐怖の瞬間がやって来ました。

激怒したサメの神カウフフは、カマロを両手でしっかりと掴(つか)んで、持ち上げました。
サメとしての本能から、彼を丸ごと飲み込もうとしたのです。

そして次の瞬間、カウフフは既に自分の口の中に、獲物の頭と両肩を押し込んでいました。
--- カマロが、まだ声も出せないうちに。


話を聞いてやろう

「おお、カウフフよ。
私を食べる前に、どうか私の切なる願いをお聞き下さい。
その後は、どうぞお好きなように。」

「お前のその言葉、気に入った。」
カウフフはこう答えながら、カマロを再び地面に下ろしました。

「さあ、お前の言いたい事って、一体何だ?
早くそれを言え。」

お前の主張は神聖だ

そこでカマロは、不当に扱われたことへの怒り、そして復讐するための旅について、詳しく説明しました。
それから、連れて来た豚を、サメの神に捧げたのでした。

カウフフの胸の中に、カマロを救いたいと願う、深い慈悲心が沸き上がりました。
そして、こう言いました。

「もしもお前が他の目的で来ていたら、今頃、わしはお前を食ってしまっていただろう。
しかしお前の主張は、神に関わる神聖なものゆえ、わしがそれを擁護しよう。

そして、わしが王のクパに、復讐することとする。」

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 17. Ai Kanaka, A Legend of Molokai, Rev.A.O.Forbes, p.186-192.