258 サメ男(2.カレイに惹かれたサメの王)

(前回からの続き)

ワイピオ川ではサメの王も遊んだ

この川には水深の深い所があり、ワイピオの人たち皆が好きな、水浴場になっていました(*1)。

そこには、サメの神の王である、カモホアリイの姿もありました。
彼はワイピオ川の淡水で遊ぼうとして、頻繁にここに来たものでした。


このサメの神の行動については、さまざまなお話が伝えられています。
それらによると、彼は人間の肉体美に、驚くほど目が利いたに違いありません。

カレイはダイビングも上手だった

当時のハワイの女の子は、強くてスタイルも良かったのです。
ですから当然ですが、カレイも泳ぎの達人でダイビングも上手でした。

彼女は均整がとれて優美なことで知られ、少しも水しぶきを上げずに、「レレカワ」をしたことでしょう。
この 「レレカワ」とは、「岩の上から水中深く飛び込む。」ことです(N.1)。

水しぶきは、不慣(ふな)れなダイバーに期せずして起こるもので、
飛び込みの動作のなかで、心が動揺することに因(よ)るものです。

サメの王がカレイに惹(ひ)かれる

どうやらサメの王カモホアリイは、美しいカレイのさまざまな魅力に、気付いていたようです。
そして彼の心は、いや、魚の体内で心のように働く何かが、彼女の魅力に惹かれていたようです。

しかし彼はサメである自分を、その乙女の心に深く印象付けるのは、難しいと考えました。
--- 大きな口の中に、彼女を丸ごと放り込むぐらいなら、朝飯前なのですが。

そうです、もっとロマンチックに、彼女の愛を求めなければいけません。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) レレカワ( lelekawa):
レレカワ(lele kawa)とは、 「断崖絶壁から水中に、水しぶきを上げずに、足から先に飛び込む。」 ことです(*2)。

このレレカワは、カメハメハ大王の時代には一つの競技種目になり、競技者のスタイルと水しぶきの量で、優劣が評価されたそうです。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.
(*2) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press, p.202,左段.