261 サメ男(5.肉を食べて強くなれ)

(前回からの続き)

祖父が肉を食べさせた

カモホアリイは、生まれて来る子が動物肉を食べることに、警鐘を鳴らしました(*1)。
しかし高齢の祖父は、それを聞き入れるどころか、全くその反対でした。

それは、彼らの男の子ナナウエが、男性の食事のタブーに従う年齢になって、すぐの出来事でした(N.1)。

ナナウエはそれ以後、家族の男たちと一緒にムア・ハウスで、食事を摂(と)らねばなりません。
ところがその食事の席で、祖父はあれこれと手を尽くし、ナナウエに犬の肉と豚肉を食べさせようとしたのです。


有名な戦士に育てたい

祖父は、孫が偉大で強い男に成長して、
有名な戦士になるように、と望んだのでした。

しかしその当時は、強くて腕の立つ戦士になっても、
その先にどんな可能性があるか? については、わかりませんでした。

強く大きくハンサムに成長した

そのなかで祖父は、手に入る時はいつでも、男の子に肉を食べさせました。

男の子は健康に育ち、強く、大きくなり、そしてハンサムに成長しました。
それはちょうど若いラマの木のようでした(N.2)。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 食事のタブー( taboo--eating)、ムア・ハウス(mua house):
男の子は、通常6歳になった年に特別の儀式を行い、それ以後はマロ(malo)を身につけて、他の男たちと一緒に食事をします(*2)。


この男たちが食事をする家がムア・ハウス(ハレ・ムア(hale mua))で、女たちがここに入ることは許されません(カプ(kapu))。
その中には家族神(霊)アウマクア('aumakua)を祀った祭壇があり、男たちは毎日、供物を捧げてお祈りをします。
(N.2) ラマ(lama):
ラマはハワイ語で、カキノキ属のハワイ固有種、の樹木名です。その学名は "Maba sandwicensis" または"Diospyros sandwicensis"です。
またハワイ語のラマには、明かり(light)という意味もあることから、ラマの木はフラの祭壇にも置かれます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.
(*2) J.S.Williams(1997): FROM THE MOUNTAINS TO THE SEA, Early Hawaiian Life, Kamehameha Schools Press, p.61-63.