264 サメ男(8.声がけの後にサメが襲う)

(前回からの続き)

神隠しのように人が消える

この頃、何とも不思議なことが起こり始めていました(*1)。
子供たち、そして遂には大人までもが、急に姿を消してしまうのです。

無愛想だがナナウエは働き者

ナナウエには一つ良い面があり、彼の無愛想なイメージを、和らげているようでした。

彼は魚釣りと水浴びをする外は、いつも働いていました。
彼の母のタロかジャガイモの畑では、ほぼいつも彼の働く姿が見られました(N.1)。



「これからどこへ行くんだい?」

海辺に行く人々は、これらのジャガイモかタロの畑を、通りぬけねばなりませんでした。

そんな時、ナナウエはいつも彼らに近寄っては話しかけ、こう尋ねたものでした。
「これからどこへ行くんだい?」

声がけの後にサメが襲う

もしも彼らが、「海へ水浴びに行くんだ。」とか、「魚釣りだよ。」と答えると、
彼はこう応じたものでした。

「気をつけろよ、さもないと頭も尾も無くなっちまうぞ(N.2)。」

このように、彼が誰かに近寄って声をかけると、いつもそのしばらく後に、
声がけされたグループの何人かが、サメに噛(か)みつかれたものでした。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ジャガイモ(potato):
原文では 「ジャガイモ(potato)」と記されていますが、実際には 「サツマイモ(sweet potato)」だったのかも知れません。というのは、かつてのハワイの3大主食は、タロ、サツマイモ、ウル(パンノキ)と言われているからです。
(N.2) 頭と尾(head and tail):
これに似た日本語として、「頭の天辺(てっぺん)から足の爪先(つまさき)まで」があります。
両者で異なるのは、日本語の「足」に対して本文では「尾」としている点です。本文はサメ男の言葉なので、足でなく尾になったのかも知れません。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.