265 サメ男(9.人間が最高の獲物)

(前回からの続き)

狙われるのは海辺の一人

万一、たった一人で海辺に行こうものなら、それが男でも女でも、
それ以後、その人に会うことは二度とありませんでした(*1)。

というのは、あのサメ男がすぐに跡を追ったからです。
そしてチャンスを狙(ねら)って、海に飛び込んだのでした。

サメの姿で襲いかかる

彼が追う人の行き先は、前もって確かめてあるので、
すぐ近くまで接近するのも、容易なことでした。

そしてサメに姿を変えながら、無防備なその人に襲いかかると、
下へ下へと深い海の中へ引きずり込みました。

彼はそこで気が向いた時に、この餌食(えじき)を貪り食ったものでした。

人間が最高の獲物

これは彼の王-父 (カモホアリイ)が予想した、まさに人類に対する脅威でした(N.1)。

その時、カモホアリイは、お腹に赤ちゃんがいる母に警告しました。
--- 生まれて来る子に、動物肉を食べさせることについて。

というのは、動物肉は食欲をかき立てるが、それを満たす手段が無いからです。
そして人間こそが、ナナウエが特に欲しがりそうで、最も手近な食べ物だからです。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) 彼の王-父(his king-father):
彼の王-父 とは、 サメの王であると共にナナウエの父でもある、カモホアリイ(Kamohoalii) を指しています。
またカモホアリイは、かつてのハワイでは 、サメの神(shark god)でもありました。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.