268 サメ男(12.黒幕はこの男だ)

(前回からの続き)

マントを引き剥(は)がされる

そして遂に、若い連中のなかでも、より大胆な何人かが動きました。

偶然のように見せかけながら、ナナウエのカパ布(マント)を、引き剥がしたのです。
そのため背中にあるサメの口が、近くにいた人たち皆に、見られてしまいました。

怒ったナナウエが噛みつく

ナナウエは、カパ布の位置がずれて、秘密が暴露されたことに激怒しました。

そして怒りのあまり、振り向くやいなや、人だかりの何人かに噛みつきました。
その時、背中のサメの口が開いては、パチンと音を立てて閉じました。

そしてカチカチという、あの音が聞こえました。
--- サメが獲物に逃げられた時に出す、と言われるあの音です。

一部始終が王に報告される

このサメの口と、彼がサメ独特の行動をする、と言うニュースは、すぐさま王に報告されました。

それと併せて、次の事実も伝えられました。
「ナナウエがよく通っていた淵(ふち)の近くで、とても多くの人々の姿が消えている。

また、海に行く途中の人々に、ナナウエが警告する振(ふ)りをすると、
そのすぐ後に、サメに噛まれたり、丸ごと食べられてしまう事件が続く。」

さらに、皆があれこれ考えて確信したことも、付け加えられました。
「それらの人が消える事件すべての黒幕は、この男だ。」



(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.