269 サメ男(13.大海へ向けて)

(前回からの続き)

ナナウエを火炙(あぶ)りにせよ

この報告を受けた王は、「全くその通りだ。」 と思いました(*1)。
そして、大きな火を燃やしてナナウエを投げ込み、火あぶりにするよう命じました。

超人的な力を授かる

ナナウエは、目の前にある物が何か?を知ると、サメの神である父に助けを求めました。
その彼の祈りに応(こた)えて、どうやら超人的な力が彼に授(さず)けられたようです。

彼は火あぶりに備えてずーっと縛られていましたが、
今や、彼はそのロープを難無く引き裂いてしまったのです。

そして、彼を引き止めようとして群がる、ウミ(王)の戦士たちを突破しました。

彼は走りました。そして人々はこぞって、後に続きました。
向かう先は淵(ふち)、海に注いでいるあの淵です。

淵の水面上でサメに変身

淵に沿って並んでいる岩に着いた彼は、
追っ手の先陣が、手を伸ばせば届く所まで、近づくのを待ちました。

彼らがやって来たその時、彼は水の中へと飛び込みました。
そして、人々からよく見える水面上で、素早く大きなサメに変わったのです。

その間にも次々と人々が到着して、その数は絶えず増え続けていました。

大海へ向けて泳ぎ出す

彼はあたかも呼吸を整えるかのように、少しの間、水面に横たわりました。
それから仰向けになると、頭の一部分を水面から出し、群がる人々に向けて歯を噛み鳴らしました。


この時にはもう、群集は土手を完全に埋め尽くしていました。

それから彼は、あたかもあざ笑うように、いやむしろ挑戦するように、
向きを変えると群衆に尾を振り動かしました。

そして、大海へ向けて泳ぎ出して行ったのでした。

(次回に続く)
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(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.