271 サメ男(15.サメの神のお告げ)

(前回からの続き)

カモホアリイ(神)に祈願する

ということでウミ王は、カレイと彼女の親類縁者たちを、釈放するよう命じました(*1)。

一方、神官とサメのカフナたちは、カモホアリイに供物を捧げて、こう祈願するよう求められました。

「どうか、あなたの神霊が、あなたのハカ(あなたに捧げられた霊媒)の一つに、乗り移りますように!(N.1)

そして、あなたの悪い息子を、如何に処すべきとお望みかを、人類にお示し下さい!

その子は人間を食べると思われており、それが常習的に繰り返され、人々にもよく知られています。
このことは、カモホアリイの意図に反しています。」

息子は自分が殺させよう

この祈願が終わると、一人のハカを通して、サメの神が姿を現しました。
彼は、わがままな息子の行動は、悲しいことだと述べました。


それからサメの神は、王やカフナたちにこう告げました。

「悪いのは祖父だ。--- 私の命令に背いて、彼(ナナウエに)動物肉を食べさせたのだから。

もしも情状酌量の余地が無いようならば、
私がサメの将校たちに命じて、息子を殺させよう。」

とは言え実際のところは、サメの神は息子にこう要求することでしょう。
「お前はハワイ島の岸辺から、永遠に姿を消すべきだ。」

万一、ナナウエがこの命令を無視して、サメの将校の一人にでもに見つかれば、
彼は即座に殺されることになっていたでしょう。

妻には手を出すな

一方、サメの神は、彼の人間の妻への愛情を、抱き続けていたようでした。
そして彼は王やカフナたちから、次のような言質(げんしち)を、力ずくで取ったのでした。

「息子が異常だからと言って、彼女と親類縁者たちは永遠に、如何なる虐待も受けることは無い。
万一、虐待されれば、あの息子が戻って来て、再びタブーを犯すことになるだろう。」

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ハカ(haka):
ハカはハワイ語で一般的に霊媒(者)すなわち、霊が乗り移って神の言葉を受け取る人、のことです(*2)。
但しここでは、「彼のハカ(彼を神と崇める信仰に専属の霊媒)」と記しているので、「サメのカフナ」を指しています。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.
(*2) Mary Kawena Pukui, Samuel H. Elbert(1986) : Hawaiian Dictionary, Univ. of Hawaii Press.p.48.