(前回からの続き)
マウイ島へ上陸する
そこでナナウエは、ハワイ島を去りマウイ島へ渡りました(*1)。そしてキパフルに上陸すると、再び人間の姿になって内陸へ向かいました(N.1)。
彼は地元の人々からジロジロ見られました。
そんな時、彼らに尋ねられると、こう答えました。
「私はハワイから来た旅人です。
ハナに着いて、あちこち見物して回っているのです。」
彼はとてもハンサムで感じが良く、話も魅惑的だったので、
人々はおおむね彼に好感を持ちました。
首長の妹を妻にする
その地域のある下級首長は、ナナウエを自分のアイカネ(友達)とみなして、「妹をあげるから妻にしなさい。」 と言いました。
するとナナウエは、こんな条件を付けました。
「私が寝る家は、妻が寝る家とは別にしたいんだ。
これは 神に誓ったことだから。」
しかしこれは嘘の言い訳で、本当のところは、
彼の異常な2つ目の口が、見つかるのを避けるためでした。
人間の肉への欲望
妻になった、あの可愛い少女が魅力的だったので、しばらくの間、彼が人間を食べようとすることは、ありませんでした。
しかし彼の心からは、夫になった新鮮さが、少しずつ失われて行きました。
そして人間の肉への欲望が、再び激しく燃え上がり始めました。
こうして彼はあの昔の習慣、そのためにハワイ島から追放されたあの習慣を、また始めたのでした。
(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) キパフル(Kipahulu):
キパフルはマウイ島東部のモクで、かつてその海岸付近には多くの人々が住んでいた、と考えられています。
その東隣には、マウイ島最東端のモクである、ハナがあります。
(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.