273 サメ男(17.昔の習慣を繰り返す)

(前回からの続き)

本性を知られマウイ島を去る

そして遂に、ナナウエはまさにその瞬間を、見られてしまいました(*1)。

彼は1人の少女を海に突き落とすと、その後を追って自分も飛び込みました。
そしてサメの姿に変身すると、彼女を貪(むさぼ)り食い始めたのです。

偶然その近くにいて、この光景を目の当たりにした人たちは、恐怖に震え上がりました。

彼らは竿(さお)に釣針を付け、岩場で魚を捕っていましたが、
その場所はちょうど、サメからは見えない位置にありました。

村に戻ると彼らは警鐘を鳴らして、人々に注意を呼びかけました。
そして本性を見破られたと知ったナナウエは、マウイ島を後に新天地モロカイ島へ向かいました。

モロカイ島でも繰り返す

モロカイ島での彼は、ポニウオフアに居を定めました(N.1)。
そこはカイナルという名のアフプアアの隣にありました。


しかし暫(しばら)くすると、彼はここでもまた昔の習慣を繰り返し始めました。

そうです。目の前を通る人たちを観察しながら、彼らに近づいては話しかけるのです。
そして独特の警告を与えながら後をつけ、人間の姿をして海まで行きます。

そこでサメに変身すると、不運な一人に的を絞って、海の底まで引っ張り込むのです。
そして餌食(えじき)となった犠牲者を、貪(むさぼ)るように食べるのでした。

あとは素知らぬ顔

人々はあまりの恐ろしさに、この一大惨事の間にナナウエの姿が無い、ことに気付かなかったのでしょう。

そして彼らがナナウエに気付いたのは、はるか彼方(かなた)に再び姿を現した時だったのでしょう。
その時の彼は小エビやカニ捕(と)りで、いかにも忙しそうに見えました。


(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ポニウオフア(Poniuohua)、カイナル(Kainalu):
ポニウオフアとカイナルは、共にモロカイ島東部のコナ(モク)にあったアフプアアです。
なおポニウオフアの綴(つづり)には、 Pūniuʻōhua(Kamehameha S.), Puinuohua(Aha Moku)などもあります。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales, 24.The Shark-man, Nanaue. Mrs.E.M.Nakuina, p.255-268.