278 オアフヌイ (1.バース・ストーン)

(新しいお話しの始め)

王家の子が生まれた地

オアフ島のエヴァとワイアルアの間に広がる台地上で、カウコナフア橋のマウカ(山側)に約1マイル離れた所が、クカニロコと呼ばれる歴史的な場所です(*1)(N.1)(N.2)。


ここはかつて、オアフ島の王や支配者たちが、生まれた地でした。

王家の女性たちはすべて、子供を生む直前にはこの場所に隠棲(いんせい)する、と決められていました。

万一、他の場所で子供を生むと、それはまさに一大事でした。
母親は地位や特権を剥奪(はくだつ)され、さらに、生まれて来る子供も特権を失うのです。

今もいくつかの石が残る

かつて王家の出産の儀式が行われた場所には、数年前にはまだ、いくつかの石が立っていました。

そして恐らく今もまだ、壊されずに残っているでしょう。


かつては最高位の神官の活動拠点

かつて、この附近はタブーの地でした(N.3)。
というのは、この島の最高位の神官が、ここに本部を置いていたからです。

彼自身、支配者階級一族の血筋を引いていました。

そして多くの場合、国王の叔父または弟であるか、もしくは王家の血筋の人と婚姻関係にありました。
さらに、極めて大きい上に統制がとれて強力な、聖職者団体のトップでもありました。

そのため彼の影響力は絶大で、国王にも劣らないほどでした。
そして、いくつかの事柄においては、彼の権力は最高で王にも優るものでした。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) ナクイナ(E.M.Nakuina):
このお話しの執筆者はナクイナさんです。
彼女の父は米国からハワイに渡って帰化し、首長(ali'i)の家系に生まれた母と結婚しました。
二人の間に生まれたナクイナさんは、ハワイ初の女性裁判官になり、また水利権の権威者としても知られていました。
さらに、ハワイ歴史協会初の女性会員になるなど、文化・教養活動にも注力しました。
スラムさんの著書 "T.G.Thrum(1907):Hawaiian Folk Tales)" では、この 「オアフヌイ(13.Oahunui)」の他にも、多くのお話しを担当しています。
(N.2) クカニロコ(Kukaniloko):
クカニロコは 1973年に、アメリカ合衆国国家歴史登録財(National Register of Historic Places(NRHP))に登録されました。
日本では「クカニロコ・バースストーン」として知られています。またこの近くには、オアフ島で人気の観光スポット、ドール・プランテーションもあります。
(N.3) タブーの地(taboo ground):
タブーの語源はポリネシア語の"tapu","tabu"で、これに対応するハワイ語はカプ(kapu)です。
カプの意味は「神聖, 禁止」などですから、ここで言う「タブーの地」は、「神聖な立入禁止区域」と言い換えることが出来ます。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.