288 オアフヌイ (11.王の首を切り落とす)

(前回からの続き)

王はぐっすり寝入っていた

王の家では、おばあさんが1人、ククイ・ナッツの灯(あか)り番をしていました(*1)。
他の人たちは誰もかも皆、眠っていました。

王オアフヌイは何枚も重ねた柔らかいマットの上で、手足を伸ばして大の字になっていました。
マットの表面は、古くから王家を象徴する赤いカパ布、パイウラで覆われていました(N.1)。

この残酷な悪党は、渇望していたあの悍(おぞ)ましい料理を、食べ過ぎてしまったのでした。
その上にアヴァを浴びるほど飲んだので、酔っ払ってぐっすり寝入っていました(N.2)。


レフアヌイが手斧で威嚇する

レフアヌイは手斧を持ちながら、威嚇(いかく)するように彼の前に立つと、こう言いました。
「おお、王よ。私の子らは何処(どこ)だ?」

びっくり仰天した王は、只々、おどおどするばかりでした。

彼は、しっかり目を覚まして気を確かに持とう、ともしませんでした。
というよりも、出来なかったのかも知れません。

王の首を切り落とす

レフアヌイは王に3度、呼びかけました。
そして酔い潰れた残虐な男、その血と肉の塊を目の前にして、父レフアヌイの怒りは限界に達しました。

激怒した彼はオアフヌイの首に、石斧で切りかかりました。
そしてたったの一撃で、王の頭を胴体から切り離してしまいました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) パイウラpaiula:
パイウラ(paʻiʻula)とは、赤いタパの布切れを、新しいタパ布用の樹皮と一緒に叩(たた)いて作るタパ布の一種です。こうすることで、赤色が白色と混合したタパ布が出来上ります。
タパ布の樹皮は複数種の木から採取出来ますが、代表的なのがハワイでワウケ(wauke)と呼ばれる木です(和名カジノキ; 学名Broussonetia papyrifera)。
(N.2) アヴァ(awa):
かつて、アヴァは神に捧げられた神聖な飲物でしたが、幅広くポリネアシアではカヴァ(Kava)と呼ばれ、酒の代わりに愛飲されました。
アルコール分はありませんが、原材料である植物アヴァの根には麻酔成分が含まれ、薬用としても利用されたそうです。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 13.Oahunui. Mrs.E.M.Nakuina, p.139-146.