296 クウラ ハワイの魚の神 (6.ウツボの洞窟を見定める)

(前回からの続き)

アイアイがカヌーに乗り込む

その話を聞いたアイアイは、アレアマイとハネオオの全ての人々に、連絡しました(*1)(N.1)。
「イリハウで、長さが数ラウ・ファゾムのロープを作るのです(N.2)(N.3)。」


そして全て準備が出来ると、何人かが荷物と一緒にカヌーに乗り込みました。
カヌーは合計2艘(そう)、2箇所から1艘ずつ出て、うち1艘にはアイアイ・ア・クウラが乗りました。

彼は2つの大きな石をカヌーに積み込みました。

そして両手に、漁師のヒョウタン容器(ホケオ)を抱えていました。
中には、マナイアアカラニと呼ばれる、大きな釣り針が1つ入っていました。

これがウツボの洞窟だ

カヌーが進んで岸から遠く離れると、彼は陸地の目印を基にして、船の位置を確かめました。
それから海の中を覗(のぞ)きながら進み、目的地に着くと、カヌーの漕ぎ手を止めました。

そしてカヌーの中で立ち上がり、1つの石を両手で持つと、海の中に潜(もぐ)って行きました。

その石の重さのお陰で、彼は海底まで素速く進むことが出来ました。
海底に着いた彼の前には、大きな洞窟が口を開けていました。

入口の周辺では、たくさんの魚たちが素速く動き回っていました。
ウルアを始めとした、色々な種類の深海魚たちです。

これを見た彼は、「あのプヒ(ウツボ)はこの中にいる。」 と確信しました。
そこで彼は海面まで浮上し、カヌーに乗り込みました。

(次回に続く)
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(ノート)
(N.1) アレアマイ(Aleamai), ハネオオ(Haneoo):
アレアマイはクウラやアイアイの家がある地で、その南隣がハネオオです。このハネオオの海岸線からは、アラウ(Alau)の岩が目の前に見えます。
(N.2) イリハウ(ili hau):
イリハウはイリとハウから成るハワイ語で、「ハウの樹皮」を意味します。ハウ(hau)はハワイの代表的な植物ハイビスカスの一種(学名:Hibiscus tiliaceus、和名:オオハマボウ)です。
このハイビスカスの樹皮(ili)は、古くから繊維が採れることが知られ、ロープの材料とされて来ました。
(N.3) 数ラウ・ファゾム(several lau fathoms):
ラウ・ファゾムは ラウとファゾムから成る語です。前者ラウはハワイ語の数詞で lau=400であり、伝統的な数え方に使われました。後者ファゾムは長さの単位で、1fathom=6feet=約1.8mです。従って、数ラウ・ファゾム = (2〜3)x400x1.8m ≒ (1,400〜2,200)m ≒ 2km です。

(注記)
(*1) Thomas G. Thrum(1907): Hawaiian Folk Tales. 21. Ku-ula The Fish God of Hawaii, Translated from Moke Manu by M.K. Nakuina, p.215-229.